COCと独立経営<765>廃車して考える車と生活者 – 関 匤

私事ながら実家に長期間おりまして、有効期限を勘違いしていたために車検が失効しておりました。別件で立ち寄ったディーラーで指摘されました。車検切れの車を公道に出せないと言われまして、止む無くそこで車検を受けることにしました。

ところがフロントガラスに細い亀裂が入っていたために、車検見積もりがとんでもない金額となったために廃車を決断しました。残存価格ゼロ円、鉄の金額だけ戴きました。

10年前にCOC会員から中古で買った使用年数13年超の車ですが、走行も居住性も気に入っておりました。廃車により、私はSSユーザーでなくなり、ガソリン減販に一役買うこととなりました。

ただし、以前から自分の行動と車について考えることがありました。首都圏ということもありますが、遠距離移動以外はほとんど鉄道を使うようになっています。車の稼働率は5%程度(月30数時間)です。つまり95%は“駐車場のモニュメント”が実態でした。

すると車の維持費用を月額にすると7万円ほどを空気に払ってきた計算になります。マンションの駐車場は安いのですが、東京都内だと月額維持費は軽く10万円を超えるでしょう。

なるほど、こういう計算をするから都市部でカーシェアリングが伸びるのかと実感したところです。

最近、シェアリングのタイムズが東急住宅リースと提携して、全国の集合住宅駐車場にシェアリングを用意するそうです。タイムズはコロナ禍で2020年5月から貸し出し拠点の閉鎖、減車を行っています。しかし11月から増車を再開しており、会員数の増加もコロナ前の水準に戻っています。

シェアリングは会員50人で1台の車を共同利用するビジネスモデルであり、自動車保有台数のすそ野を侵食していきます。EVが本格拡大する以前に、ガソリン市場にボディーブローが効いています。そして車の概念を「移動体」に変えています。

とりわけコロナ禍でネットフリックスに代表される「サブスク」が流通業のキーワードになっています。シェアリングは象徴的な存在です。大げさに言えば、スマホによる移動体の支配が始まっているのです。サブスクが支持されるのは月額定額払いであり、シェアリングの動機としては月額維持費への関心が高いはずです。

元売が中期計画のSSサービス像に、シェアリングやカーリースを置く理由もここにあります。EVになったらなったで、電気で利用者を維持するのでしょう。

ネットで検索すると分かりますが、カーシェアリングは時間だけ車を利用するだけにとどまらず、利用客は思わぬ使い方をしています。

例えば、駅近くならコインロッカー代わりに使う。大きな荷物が入るうえに料金もロッカーより安いからです。移動体ではなく場所として利用する人が少なくないようで、「人に聞かれたくない電話」「仮眠場所」「一人カラオケ」「赤ちゃんの夜泣きの避難場所」等々あります。9時間2060円の深夜パックでは酔っ払いがホテル代わりに使うそうです。

「時間」もキーワードになると思います。博報堂の「時間に対する意識調査」(2020年)によると、「時間を高速化したいニーズ」は20年前に比べて20ポイント以上激増して過半数を占めます。

こういう意識を促進したのは間違いなくスマホです。スマホは通勤電車でメールやネット通販を行うことで時間を高速化しています。乗りたいと思った時にスマホで車に乗れるという、時間の高速化もシェアリングの背景要因にあるはずです。

愛車の廃車からずいぶん話が転がりましたが、シェアリングの背景にある生活者の意識を考えることがSSの事業にも水平展開できないかを考えた所存です。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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