COCと独立経営<774> 「標準価格制度」の宿痾② – 関 匤

価格高騰対策で、政府が元売にガソリン補助金ですか。凄い時代になりました。「事後調整」が国家レベルで行われるのですから。もはや世界遺産申請ですね。

やるなら1㍑5円なりの値引きを、品確法登録SS全てが認識できるようにお願いします。商社にPB向けの供給経路証明をださせているなら、このマニフェスト制度を活用して平等にお願いします。

18日朝の日経新聞は「ガソリン補助金、効果・公平さ疑問」と補助制度に対してかなり手厳しい論調で書いていますね。

同じ18日のロイター電は「米が石油備蓄放出を要請、日本や中国に」と打っています。これが合理的ではないでしょうか。日米中が足並み揃えて30日分ほどを放出したら、相場は確実に冷えますね。

それより18日の油業報知新聞一面です。参加者がシュプレヒコールを上げる姿が大々的に報じられていました。「石油サプライチェーンの維持を」とありましたが、「高値で困る消費者の皆さんに今こそタックスオンタックス解消を!」といつもの主張を対消費者に送るべきです。消費税課税分解消で「1㍑5円」下がりますよ。

世論に響きますね。”SS経営者が立ち上がってくれた!”と賞賛の嵐となるでしょう。

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前回の続きです。指示したのですがグラフにタイトルが入っておらず意味不明の編集になっていました。もう一度掲載しておきます。

データの出所は総務省で「東京都区部のガソリン・灯油小売価格調査」です。

石油危機前の1972年、ガソリンと灯油の小売価格差は1㍑13.2円でした。ところが危機後の1977年には、ほぼ4倍の1㍑40.9円のガソリン高です。当然、仕切り価格がガソリン高になったことを意味します。

この価格体系を私は「宿痾」と呼びます。国際常識に反して、価値の低いガソリンを高値にした標準価格制度を1996年まで続けてしまったことです。四半世紀で元売もSS経営者も完全に「ガソリン脳」になりました。こう考えているのは私だけではありません。元売のENEOSです。同社の「石油便覧」にこう記述されています。

「標準額設定により定着した、他の燃料油に比べてガソリン価格が極端に高いという、いわゆる「ガソリン独歩高」の石油製品価格体系は、過度のガソリン販売競争の誘因となるなど様々な影響を石油業界に及ぼしつつ、1996年春まで続いた。」(下線部筆者)

石油便覧のような石油産業のガイドブックの場合事実をたんたんと記述するのですが、抑えた表現ながら下線部には「意思」が込められています。

原油から仕切りまで最大で1㍑60円マージンあったと聞いたことがあります。価値にそぐわない非合理的な利益と分かっているから、ここに特約店と商社が蜜の味を求めて蝟集します。月次の事後調整や販促補助はもちろん決算時の赤字補填が当たり前のように行われました。

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商社には「年度末の餅代」という言葉があって、企業により違いますが数十億円の餅代が得られたそうです。業転流通には商社から先に、一つの物流に数社のブローカー商流が入ることもありました。

標準価格制度がなし崩し的に維持されたがために、ガソリンは「打ち出の小槌」となりました。SS経営者は、どこに正しい原価があるのか認識できないので、底なしの安値競争が出来しました。

これが石油便覧にある「様々な影響」ということです。そしてガソリン高は利権となり、それを維持するために販売業界が自ら規制を求めていったのです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局

 


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