COCと独立経営<785> 「170円と5円」の情報一人歩き – 関 匤

油業報知新聞2月17日付中国版に「市況問題に苦慮 170円超えると来店が減少」とありました。

COCは“オミクロン野郎”のせいで2年ぶりの集合研修会を吹き飛ばされ、再びリモート研修会に戻りました。そこでも「ガソリン補助金」がSS小売り業者に災いを為していることが明らかになりました。

「170円」、「5円補助」という“言霊”が一人歩きを始めて、消費者に刷り込まれてしまったようです。これは消費者が愚民というよりは、政府の打ち出し方とマスメディアの報じ方によるものです。元売の値上げ額と補助金を相殺するという手順がきちんと説明されていないからです。

というよりも、一見して理解できないスキーム自体に問題があります。霞ヶ関のエリートは、ともすれば精緻に政策を構築して自己満足に浸る傾向があります。しかし、政策担当者でない一般消費者は、新聞の見出しやワイドショーの消化不良の話で「ガソリンは下がるんだ」としか理解しません。エリートはやさしい伝え方を嫌うようです。

そのツケを払わされるのが、冒頭の油業報知新聞中国版にあるSSスタッフたちです。彼らも、分かりやすく制度を説明するのに苦慮しているはずです。現場が説明できない制度が一般消費者に理解できるはずはありません。

◇◇

ここで問題になるのが、補助金値下げを瞬時に反映できるSSとそうでないSSが混在していることです。

元売直営SSは反映できます。しかし、一般販売業者は地域や規模によって、仕入れ価格や取引形態の違いによって簡単に反映できない事情を抱えています。

もっと踏み込むと、石油流通は「3階建て」になっていることです。系列サブ店とPBです。後者のPBは系列特約店である商社を経由して取引を行っています。多くはキャッシュオンデリバリーであって、瞬時に仕入れ価格が確定するので、補助金変動を反映しやすい形態です。

一方、系列サブ店は元売から特約店を経由した済度取引です。この間に仕入れ価格に「ゲタ」が履かされています。だから需要が小さくてもともと高めの市況地域の場合、すでに「170円」を超えています。規模の経済が働かなくて構造的に高く売らざるを得なかったSSが、「170円アナウンス効果」の前にさらなる客数減に直面している。それが冒頭の記事の趣旨と考えます。

ブランドを供与する元売がサブ店をどう考えているのか分かりません。後継者のいない家族経営だから廃業するまでそのままにしておくのか。あるいは、優位な後継者がいるお店は特約店昇格させて支援するのか。

自由化以前は、後者の政策が存在しました。はるか昔の話ですが、米国独禁法でスタンダードヴァキュームが解体されてエッソスタンダード石油が誕生した時のことです。エッソは本国の方針もあって、「二重流通」を嫌ったそうです。そこで代理店に数年間の営業補償を支払ってでも、サブ店の代理店昇格を政策的に進めています。現在、ENEOSの有力特約店の中に「本籍地サブ店」の方が少なからず存在します。

コンビニも20年ほど前まで、「サブフランチャイザー制度」がありました。地域有力企業が地域本部となって加盟店を広げていました。しかし、今は(私の知る限り)皆無です。

1つは大規模なFCトラブルがあったこと。もう1つは、本部があるべきブランド像が、地域本部が介することで歪んだことです。消費者が同じブランドなのに違和感を覚えることがあったためです。

ガソリン補助金もSS流通構造や地域性が顧慮されずに、「170円」と「5円」が喧伝されてしまった結果、あたかも「味噌がクソ」になる伝言ゲーム化しているようです。最大の被害者はSS店頭スタッフたちです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206