COCと独立経営<791>シカゴで「ガソリン・ギブアウェイ」 COC・中央石油販売事業共同組合事務局 – 関 匤

“二大元売時代”になって以降、ガソリン流通に関しては配給統制が実態です。また、「ガソリン補助金」というガソリン市況への公的資金投入も行われて、石油業界はもはや公益事業の様相を呈しています。

もっとも、独立系としては「サービス・ステーション」を追求するだけです。セルフの場合、給油は自動販売機を並べているのですから、ヒト・モノ・カネをSS業態転換や利益事業構築に集中する時です。ガソリンは元売様が決める仕入れ価格で売るだけです。

ネットで興味深い古書を見つけたので購入しました。「石油経済論」(千倉書房)です。発行は「昭和16年6月18日」で、大東亜戦争開戦半年前です。北澤新次郎と宇井丑之助両氏の共著です。

宇井さんは戦後、モービル石油の代理店としてSS経営者となり東京都石商幹部を務めています。一面識もありませんが、学者肌の経営者で経済学関連の著書を数多く上梓しています。

開戦前の石油業界はなんとなく今と似通っています。現代文で要旨にまとめますと同書にこうあります。「英米二大石油会社の競争により我が国の消費者は法外に安い石油を使うことができた。しかし民族系は外資系の競争により莫大な欠損を生じてきた。そこで民族系保護と国防的見地より石油業法を制定して、石油業者の自治統制を強化して官治統制に改められた」。

英米二大石油会社とはスタンダード(エクソンモービル・東燃ゼネ石)とシェル(昭和シェル)です。石油業法下を経て開戦時に日本市場から撤収しています。強引ですが「石油業法」を「高度化法」に、「石油業者の自治統制」を「流通経路証明」に置き換えるとどこか似たものを感じます。

また、人造石油やアルコール燃料など石油代替エネルギー開発を進めているのも、環境問題を抜きにすれば似ています。人造石油とは石炭液化です。技術的にはヒトラードイツで確立されて実用化されていました。20万BD規模と言うから半端じゃありません。その代わり、大量の硫酸を使用するため甚大な公害を引き起こしていますが。

さて、日本では公的資金投入ですが資本主義の米国は違いますね。

シカゴの実業家で前市長選候補だったウイリー・ウイルソン氏が私財100万㌦(1億2000万円)を投入して「ガソリン・ギブアウェイ」です。日本でギブアウェイと言えば「ガソリン20ℓでティッシュ5箱」ですが、ウイルソン氏はガソリンの進呈です。

1人最大50㌦分の条件はありますが、米国の市況で換算すれば「10ガロン(40ℓ)」相当額です。2万台分に相当します。どういう仕組みでSSに投入されるか不明ですが、これは魅力的なので3月24日の開始初日は市内SSに車が殺到しています。

あるSSでは、オープンの午前7時に400台が並んでいます。東日本震災時のガソリンパニック並みかそれ以上です。このためシカゴの交通は随所で大混乱して、シカゴ市警が振り回される大騒動となりました。

さらに翌週、ウイルソン氏は20万㌦相当の第2弾を投入しています。初回に懲りて警察と相談しながらです。米国では、思い切り稼いで寄付するという実業家が多いようです。プロスポーツ選手もよくやっています。

日本でも先の石油経済論が書かれた時代には「篤志家」という人たちがいました。時々、人名の付いた道路や橋がありますが、これは公共事業に私財を寄付する人がいたからです。それほどでなくても、貧困で進学できない小学生を大学まで面倒を見る方も少なくありませんでした。別にガソリン補助金を揶揄するつもりはありませんが、篤志家精神は米国人が引き継いでいるようです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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