COCと独立経営<792>SSハードの発展型が見えない – 関 匤

4月1日から油業報知新聞のタイトルが「油業報知HELLO」に変わりました。水素(H)、電気(E)、L(LPG)、L(カーライフ)、O(オイル)の造語です。“エネルギー業界の今と未来を応援します”とあります。よく考えられたネーミングと感心します。

昨年に90周年を迎えて、エネルギー新時代に心機一転ということです。ただ一点、惜しいのは「C」(化学)の欠如です。脱炭素で悪者扱いされますが、化学製品無くしてガソリン車もEVも、そしてスマホも機能しません。(ない物ねだりで恐縮ですが)

創業の1931年(昭和6年)は満州事変が勃発した年です。今、ロシアが堂々の侵略戦争を仕掛けていますが、油業報知新聞創業の翌年にも旧ソ連絡みの経済戦争が火ぶたを切っています。

川崎重工、川崎製鉄など川崎財閥を率いる松方幸次郎が、ソ連から激安ガソリンを輸入して大暴れしています。「赤い石油」と呼ばれて市場をガタガタにしています。創業時の油業報知新聞記者たちは創業安売り合戦の記事を飛ばしまくったことでしょう。

エネルギー転換期にあたり、新たな創業として紙面のパワーアップを期待しております。

SS業界はどうなるのだろうか?と聞かれることがありますが、「それは個々の問題」としか答えられません。「我々石油販売業界」という方がおられますが、私は「業界」という“かたまり”はもはや存在しないと考えています。同じENEOSや出光の看板を掲げていても、共通項はガソリンの所在を告知することだけです。個々の経営者の意識と行動はバラバラです。

現在のSS経営者は自由化からの年間1000カ所をはるかに超えるSS淘汰の嵐を生き抜いてきましたので、環境変化に適応する力をもっているはずです。環境変化を認識しているからこそ、他人の指図を受けずにヒト・モノ・カネを我が社なりに有効に使う方が少なくありません。(コミッションエージェントと社有SS店を除く)

元売の中期計画とは違った、経営者独自のSS業態革新は随所に見られます。ある1SSの家族経営のお店は、ガソリン数量へのこだわりを捨てて、油外もあれこれやらずに自分の得意商品に特化しています。洗車まで捨てています。部分に特化して商圏で断トツトップを続けています。元売が絶対推奨しない生き方です。

優位な経営者による業態革新が胎動しているのですが、残念なことはSSハードそのものが昔の基本形のままで何かをする際に制約要因になることです。加えて、ハードを見直す投資も減退しています。

SSの一般像は、給油、軽整備、セールスルームの3機能から成ります。これは1950年前後に米国で確立して日本に輸入されました。その時代、日本も米国も敷地規模を除けばハードは同型でした。

残念なのは、以前「標準価格の宿痾」でも述べましたが、第一次石油危機以降の業界(自己?)規制が強化と消防規制により、SS発展型の開発が停滞しました。

この間、米国ではハード面で革新されています。手元に1962年のエッソディーラーニュースがありますが、米国事情としてセールスルームを大型化した「オートマート」が紹介されています。そのうち、整備機能を外して石油会社がコンビニ業態を系列戦略にしました。こういうSSを見た日本の経営者の中には、構想を描く方も少なくなかったのです。第一次石油危機までは。

現在では、流通系の成長企業の業態ハードはもはやSSに収まっていません。大型の道の駅に「ガソリンも置いている」といったところです。バッキーズという会社は120カ所の給油ポイントを擁していますが、彼らの売りは「トラベルセンター」という巨大なコンビニです。ほとんどの商品が自社ブランドです。同社のみならず独自開発・店内調理の飲食部門の魅力作りにしのぎを削っています。

時代ごとにハードを変容させた米国に対して、日本の「将来SS」は従来型SSの敷地を拡げただけにしか見えません。そこに誰でもやっているランドリーやFC店を並べた場所貸しでは、将来が見えてきません。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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