COCと独立経営<805>生き残った家電店にヒントがある – 関 匤

7月26日の油業報知新聞に「山梨県にコストコ進出」がありました。県石商では、過去のコストコ出店で近隣SSにどういう影響が出たのか、閉鎖したSSの事情も含めて調査するという内容でした。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」で大変良いことと思います。

ただし、SS閉鎖というとちょっと違和感があります。というのもコストコのガソリン初出店は2015年でした。SSの減少で言えば、自由化から2015年の間に46%も減っています。15年から20年度では10%減です。コストコ初出店となった山形県は自由化以降SSは半減していました。年間22カ所減っていたのが、コストコ登場以降は年間8カ所と減少ペースが落ちています。

コストコは市場に影響しないとは言いません。コストコ以前のSS減少はなんだったのか? SS業態同士の競合であり、セルフで立地・設備に優れたSSが直近商圏のSSを駆逐しました。商圏が異常に広い流通系よりも、同業態競争の方が激しい客数移動を起こしたことは言うまでもありません。

しかし、SS数が半減する市場を自由化以降生き抜いてきた「ふつうのSS」は面白いなと感じています。街の電気屋さんと相通じるような生き方に思えます。

電気屋さんは80年代に店舗数がピークとなり、以降は量販店の激しい競争で家電製品の売り上げが激減して、後継者問題もあって次々減少しました。最近のデータが見当たらないのですが、2008年にピーク時から44%減少しています。SS減少に匹敵する数字です。SSにとってのガソリンが、電気屋さんにとっては家電製品とこじつけてみます。

街の電気屋さんのHPを見つけました。年商3.6億円と電気屋さんとしてはトップ級です。店舗は本店とリフォーム専門店舗の2カ所。従業員は20名とあります。本店の画像を見たら、少し広めながら電気屋さんのイメージ通りの店構えです。社名も「京王電業社」といかにも電気屋さんです。

面白いのは、SSならキャンペーンとか「車検年間何千台!」とベタベタの物販イメージを出しがちです。一方、この会社は電気製品の体験に力を入れています。ホームベーカリー、フットマッサージャー、ナノイードライヤー、光エステ…といった製品を店内でお試しする。無料会員登録すると、有償の貸し出しサービスも行っています。

アンチエージングでエステ関連家電も増えています。ここでも体験型で、超音波美顔器やスチーマーを使って、低料金でスキンケアを行っています。さらに、コーヒーマシン、ジューサー、電解水素水製造機などを使ったオリジナルドリンクを提供するカフェコーナーを設けています。カフェにこんな文言があります。

「電池や電球など消耗品の購入ついでに1杯いかがでしょうか? 55型4K有機ELテレビ、USBコンセント、ゲストWi-Fi完備でゆっくりとくつろげます。」

家電もお店も体験してくださいというメッセージです。実は体験は家電店の伝統芸で、“三種の神器”と呼ばれた時代から実演、お試しが始まっています。このお店は今の消費者によりそう体験を提供していると思います。

生き残ってきた家電店は、成熟と呼ばれる市場で存在感を発揮します。家電を使い続けたいニーズに俊敏に対応します。家電販売はヤマダやヨドバシにまかせて、彼が踏み込み切れない小商圏の細かなニーズを拾い上げながら顧客との関係を強化したのでしょう。

私の片田舎の電気屋さんは、従業員2人が軽トラで町中を駆けまわっています。工事のスキルも年々上がるため、学校の銅像修理まで請け負います。小さい商圏で修理を独占的に担っているかもしれません。

そして家電メーカーも電気屋さんチャネルを大切にしていることです。パナソニックが10年ほど前に、上野樹里主演で和歌山の家電店を舞台にした映画を支援して幾つも映画賞をとりました。HPも一般顧客向けに参加型の内容です。こういうのを良き系列関係というのでしょう。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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