COCと独立経営<816>COC会員の企業売却 – 関 匤

財務省の「ガソリン補助金が正しく価格抑制に使われていない」報道が、かまびすしいことになっています。

こんなの市場原理を知っておれば何も問題ではありません。魚でも野菜でも、個々の小売店の仕入れ価格は千差万別です。調達時点で相当の違いが生じます。そして販売するのに幾らの利益を乗せるかも同様です。

大してお客の来ない街場の食料品店は「これで買ってよ」価格で大きく利益を乗せます。間違ってもコストコに合わせることはありません。

ガソリン価格も同様です。需要の大きい地域、競争の激しい地域、客数を伸ばしたい経営戦略等々によって相対的に補助金そのまま、あるいはそれ以上の値引きを提供します。一方、人口減が続くうえに、SCとかHCのような車を集めるような施設がない地域では、もともと仕切り変動以上の利益を乗せるのも自由です。

もっとも財務省が拠り所としている「価格調査」自体が、本当に市況の実勢を反映しているか全く疑問です。

本当に市況実態を知りたければ、「全SSの販売数量×実態売価(カード値引きも含んだ)」を総販売量で除するしかありません。財務省が仕掛ける議論の前提=市況判断がおかしいのですから「110億円が市況に反映されていない」という意見は“無効”と言って過言ではありません。

そもそも、財務省は日本の小売市場をマル経ならぬ「北朝鮮経済学」でみているようです。個々の小売事業者の経営判断は、憲法で「自由」が認められていますが、財務省は「全部おんなじ」でないと気が済まないようです。どんな商品でもお店ごとに価格と考え方が違うのです。

すでに共同通信が配信しているので、これは書かざるを得ないでしょう。

COC前理事長を務めた村上直之社長の(株)ムラカミ(茨城県笠間市)が、北海道の出光系最大手のAIXさん(アイックス)へ全株式を売却しました。

2店舗ですが、ガソリンよりもカーケアを事業化して大繁盛店としました。茨城県信用保証から「茨城の元気企業」に選出されるほどでした。

私は同社の「語り部」を自任するほどなので本当に残念です。後継者の出来が良過ぎて超優良企業に就職したこともあります。ただ本人曰く、経営と従業員の今後を考えた場合により大きな展開が必要となるが、自分は繁盛店を作ることはできたが「面の展開」はできない。5年、10年先を考えると年齢的にも厳しい。カーケアに熱心に取り組みネットワークでの展開に習熟したAIXさんに今後を託したい、ということでした。

育て上げた社員のこれからをよく考えた経営判断であり、外野席の私がとやかく述べる立場にありません。むしろ「よくここまでやったね」という思いが強くあります。

業界自由化の頃、ガソリン市場競争が激化した半面、旧運輸省の規制緩和が重なってSS業界は「車検」という高収益商品に参入できました。

その頃、村上さんは三菱石油の1SSサブ店でした。ガソリンよりもオイルが得意で、工業用潤滑油まで手広く扱っていました。非常に勉強熱心で、自由化を前にセルフ先進市場を研究したいと、業界団体の旅行会ではなく単独で自腹を切って米国に赴きます。

レンタカーを借りて、面白そうな店があれば飛び込みで見せてもらいました。オイルマン共通の親近感があるのか、片言の英語でも親切に対応してくれることが多かったそうです。そこでテキサコSSで行っていたオイルサービスに出会います。これが村上さんにとって「運命の出会い」となりました。(この稿続く)

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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