COCと独立経営<837>「コスモエネルギーHDの中期計画」 – 関 匤

前回の原稿で国内燃料油販売に関して、2002年を100とした20年間の推移をグラフにして添付したのですが、3月27日付油業報知新聞では掲載されませんでした。ガン無視されたようです。編集者にとっては大した価値を感じなかったのでしょうが、当方は無い知恵を振り絞ってエクセルで加工しているわけです。役所や元売の出来合いの図表をそのまま掲載する新聞社よりは、読者サービスを考えているつもりです。

と、愚痴はこれくらいにして、前回掲載されなかったグラフでは「02年比で燃料油販売は62.6%まで縮小」を表していました。EVや再エネを待つまでもなくこの構造的な市場縮小に、もっとも大きな危機感を感じているのが元売です。

コスモエネルギーHDが2030年のビジョンと23-25年の中期経営計画を発表しました。計画を眺めて、これからの8年間で確実にコスモという会社は「彼は昔の彼ならず」になると実感しました。そして、そうならなければ企業は存続しえないでしょう。

コスモ中計3カ年の投資計画(億円)
コスモ中計3カ年の投資計画(億円)

同社は2018-2022年度の第6次中計で、①経常利益(在庫影響除き)、②当期純利益、③フリーCF、④自己資本、⑤ネットD/Eレシオ、⑥ROEの目標をすべてクリアしています。
キグナス石油への供給が始まった2019年度以降、精製稼働率が右肩上がりとなり22年度は第3四半期で93.9%、定修を除くと99.2%とフル稼働しています。

同時期のENEOSの稼働率は製油所トラブルもあって78%、在庫評価益を除く石油事業の利益は▲381億円、出光は82%で石油事業12億円、コスモは石油事業307億円を計上しており、装置の稼働率の差が完全に明暗を分けています。コスモの第6次中計の推進ドライバーになったことは言うまでもありません。

23-25年度の第7次中計では、3カ年で4200億円の投資を計画しています。その3分の1を「グリーン電力供給」と「新エネルギー開発」に投入します。先述した「彼は昔の彼ならず」への動きが明らかになっています。

石油関連では、こういう文言が並んでいます。「製油所の高稼働」「高効率操業の実現」「事業マーケティングサイエンスによる燃料油販売の高度化」「石油開発の生産量最大化」。SS業界に直接関連するのが「マーケティングサイエンス」なる言葉です。

「市場の変化の速度が速まり、先の読みにくい時代に変わってきました。加えて情報・通信技術の発展により、販売や消費に関連するデータが豊富に入手できるようにもなりました。職人芸に頼っていたマーケティングの意思決定をもっと科学的に行っていこう」(早稲田大学・守口剛ゼミHP)
膨大なデータ(ビッグデータ)をAIで解析してマーケティングの精度を高めるということですね。コスモは中計で「データ活用コア人材の育成」として3年で900名を育成すると明記しています。そこには石油事業から非石油事業へ人員を傾斜させる狙いもあるのでしょう。

SS絡みで連想したのはコスモの東京新宿中央セルフSSです。実態として無人SSです。確か決済はキャッシュレスオンリー。カーシェアリングをやっていますがスマホアプリで人手不要です。
SSは小売業界にあって明らかにデジタル後進組です。そのぶん激しい勢いでデジタル変革が起こる可能性があります

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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