COCと独立経営<841>「SS5つの方向性」と28年前の報告書 – 関 匤

全石連がCN(カーボンニュートラル)社会進展への対応として、SSの事業再構築・経営力強化を後押しすべく「SSが目指す5つの方向性」を打ち出しています。

①総合エネルギー拠点化
②地域のコミュニティインフラ化
③多角化・多機能化
④協業化・経営統合・集約化、事業承継、公設民営化
⑤事業・業種転換、廃業・撤退
-という「方向性」です。

デジャビュー(既視感)を覚えました。どっかで見たな、聞いたな…で思い出しました。

今をさかのぼること28年前、特石法撤廃=業界自由化を翌年に控えた1995年に、資源エネルギー庁の諮問委員会「石油流通効率化ビジョン研究会」が中間報告書を発表しました。自由競争に突入するSS経営の今後の方向性として「28年前に」以下の4つの分類が明記されました。

①サービス充実型=車両関連サービスの充実による固定客の拡大
②量販指向型=徹底したコストダウンによる価格指向で顧客獲得
③多角経営型=立地特性を活用した多角化による収益基盤の拡大
④早期撤退型=合理的判断で閉鎖・転廃業、経営資源の(新事業での)有効活用

この当時、すでにバブル経済は大崩壊の坩堝にありました。本来は事業再構築という前向きな言葉であるリストラクチャリングが、リストラ=解雇に意味を転じていました。喫茶店のカウンターで“どしゃ降り就活”の女子学生が頭を抱えて突っ伏す姿を見ました。

ビジョン研報告を改めて読むと、私が以前書いた臨時措置であったはずの「標準価格制度」のガソリン独歩高がなし崩し的に維持されていること、そこから生まれる事後調整などインセンティブが系列維持の源泉となっていることを踏まえて、自由化=国際価格体系への移行は相当の衝撃力を持つことを、柔らかな表現ながら伝えています。
さらに経済環境の変化と様々な産業で規制緩和と構造変革が行われており、SSはガソリン依存体質から業態転換不可欠といったニュアンスが伝わります。

それまでのガソリン高と規制に守られた業界に「撤退」という言葉はご法度でした。“SS倒産しない神話”がありましたから。
しかし現実は28年でSS数が半減しました。ビジョン研の見立てというか危惧は当たりました。現在のSSの姿も、おおむねビジョン研の分類①~③のいずれかの範疇にあります(業態と方法論は様々ですが)。

COCの某PB経営者は、自由化当時は元売の特約店でした。真面目に報告書全文を読んで理解したうえで、系列のメリットを捨て去ってPBに転じました。現在はビジョン研分類の②と③にいます。この方にとってビジョン研報告は、まさにビジョンを示したことになります。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206