COCと独立経営<842>「意図的パンク事件」に思う – 関 匤

中古自動車販売業界最大手のビッグモーターで不正事件が発覚しています。

週刊フライデーのスクープです。事件の重さを考えればテレビの東京キー局や大手新聞が騒ぐに値すると思うのですが、(私はテレビを見ないので分かりませんが)お騒がせしていませんね。方や、ネット空間では大騒ぎです。
膨大な広告宣伝で事実を隠蔽しようとしている説が蔓延しています。安倍元総理の国葬を「電通の陰謀だ~!」と騒いだ某テレビAサヒのT川さんはここでこそ本領を発揮すべきと思うのですが…。

事案は熊本市の直営店で、預かった顧客のクルマのタイヤを意図的にパンクさせていたものです。保険扱いになるので、巧妙にタイヤに穴を穿って高級タイヤに交換した「ことにして」請求し、実際には汎用品の安いタイヤに交換して顧客から交換手数料をせしめていました。行ってこいで利益を着服していました。

ヤバイと思った従業員の内部告発で明らかになりました。凄いですね。店長が、保険会社に通りやすいようにパンクの仕方を教える「研修画像」が暴露されています。自然にパンクしたように偽装して、顧客には高級タイヤと思わせる「マニュアル画像」です。

週刊フライデーに掲載されたビッグモーターの 「タイヤパンク研修画像」。 店長が保険金が取れるパンクの仕方を実演している
週刊フライデーに掲載されたビッグモーターの 「タイヤパンク研修画像」。 店長が保険金が取れるパンクの仕方を実演している

先述のように大手メディアは不思議と(広告宣伝料欲しさに?)報じていませんが、YouTubeでは炎上状態です。元ビッグモーター取締役であり四国で自販業を経営する中野優作さんの動画には144万人(5月9日時点)ものビューアーがカウントされています。
中野さんは「自分がいた時代は創業オーナーの元で顧客に向いた営業だったが、代替わりして数字にこだわる経営陣に替わっていった」という趣旨の発言をしています。

ネット情報では30歳前後で1000万円以上の高給を得ている人がたくさんいるようです。その代わり「数字の要求」が、マニュアルを作ってでもタイヤをパンクさせる行為を生み出したのかなと思います。

「意図的なタイヤパンク」で思い出したのが、2010年頃のSS業界です。

関東の元売直営SSで同様の事案が発生して、刑事事件となりました。2カ所の直営SSで逮捕者が出ました。これは報道されています。また、一時期ネット上で「SSで意図的にタイヤをパンクさせている」という告発サイトがありました。
実はかくいう私も、某埼玉SSで給油中にトイレに行っている間にタイヤに釘が刺さっていた経験があります。市場調査の仕事中であり、身元を明かせないので泣く泣くタイヤを交換しました。
また、別の元売直営SSの指定整備工場がペーパー車検で改造車を通検していたために、指定資格を取り消しされています。その後、SS自体が閉鎖されました。

私は国交省ネガティブ検索サイトをまめに見ています。車検の不正事件が社名・店名で公表されています。COC会員に対して「絶対やっちゃいけないよ」と啓蒙するためです。

2014年からチェックしていますが、石油系とおぼしき事例が38件あります。うち12件が元売直営SS、5件が出資会社です。他にも名だたる大手特約店が名を連ねます。最近はかなり少なくなっており、逆にメーカー系ディーラーが増加しています。さすがに元売のコンプライアンスが効いているようです。

SSで不正が行われた構造はビッグモーターと同じだと思います。中野優作氏言うところの「数字へのこだわり」です。
背広を着た人たちが数字の結果を現場に求めて、現場は方法論の是非なく結果を出そうとするインセンティブが働いたという構造です。

元売はカーリースなど車販に動いていますが、同じ轍を踏まないようお願いします。独立系が真面目に向かっている顧客に不信感を抱かせますから。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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