COCと独立経営<848>「「人口174人」に出店するバッキーズ」 – 関 匤

日本でも知る人ぞ知るのが米国の「バッキーズ」(Buc-ee’s)です。統計上コンビニに分類されますが、「トラベルセンター」というコンビニのカテゴリーキラーです。
6月にテネシー州にオープンしたセバ―ビル店は敷地面積6875㎡という大規模店です。米国コンビニ誌によると、コンビニ業態と見れば全米最大すなわち世界一のコンビニとなります。
コンビニは最寄りの目的買い業態ですが、トラベルセンター業態は敷地面積、店舗面積、商品群とカテゴリーいずれもコンビニを凌駕するボリュームです。道の駅のイメージでその名の通り広域に集客します。

もちろんガソリンを販売しています。なにしろポンプ数が100基前後と途方もない規模なので、これもカテゴリーキラーです。

2018年にCOC会員が撮影したバッキーズ(テキサス)。ポンプが120基並ぶ壮観。核店舗(大型コンビニ)の魅力で広域に集客する
2018年にCOC会員が撮影したバッキーズ(テキサス)。ポンプが120基並ぶ壮観。核店舗(大型コンビニ)の魅力で広域に集客する

米国価格情報会社OPISの「ガソリン販売トップ50」でNO.1が指定席です。店舗シェアはわずか0.03%。しかし、マーケットシェアは0.25%。米国市場は日本の10倍規模ですから、46店舗で日本ならキグナス石油を超えます。
米国市場には業態の進化を実感します。

70年代まで、日本も米国と同時代的でした。しかし、何度も書いてきましたが、オイルショック後、米国はセルフ化と業態進化の道を歩みますが、日本は「石油村」に引き籠ることになりました。
米国の業態進化は伝統的油外アイテムの空中分解から始まりました。SSの物理的な作業能力の弱さに対し、オイルや洗車専門業態が躍進して顧客と人材が流出しました。
日本も同じ状況にありました。オイルショック後の1975年前後にカーショップ、ホームセンターが急成長します。SSのオイルシェアが急降下します。
米国は石油会社が伝統的油外を捨てて、セルフ+コンビニ業態に舵を切ります。1990年頃には、米国でSSとコンビニの業態区分が消滅して、消費者はコンビニ=SSと認識します。
当然、SS+コンビニ競合が激化します。90年代に石油会社は重点SSにマクドナルドなど飲食業態を併設する「コ・ブランド」戦略を投入しました。ガソリンブランドと有名チェーンブランド双方の認知で集客するのがコ・ブランドです。

90年代後半、世界経済危機で原油が大暴落します。石油メジャーは利益性の低い精製・販売のリストラを進め、とりわけ面倒が多いSSリテールから後退します。代わって急拡大したのが、ウォルマートやターゲットといった「ビッグボックス」と呼ばれるハイパーです。
“石油村で大人気”のコストコも「倉庫店業態」としてV字的に店舗とガソリン販売を増やします。

そして流通系コンビニです。石油メジャーが売却する店舗を取り込みながら、これまた急拡大します。石油系に比べて、流通系の商品開発力、店舗管理能力は格段に高い強みがあります。

そしてバッキーズというさらなるカテゴリーキラーが登場しています。高い商品開発力と米流・道の駅の強みを発揮して、ハイウェイ上で広域に集客します。ガソリンの安さもさることながら、大型コンビニという核店舗が強力な磁力となっています。
バッキーズはさらなる新店としてケンタッキー州のスミスグローブという町で起工式を行っています。この町の人口は「174人!」です。オープンすれば人口の1000倍近い車両が殺到することでしょう。
業態進化を忘れた日本の石油村が百万言を弄するよりも、補助金を無理やり注ぎ込むよりも、集客力の高い進化業態が一つあれば「過疎地問題」なるものは一発解消するのです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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