COCと独立経営<852>「ビッグモーター=同族経営=石油村?」 – 関 匤

前回も書きましたが、中央メディアのビッグモーター社(BM)への手のひら返しは凄まじいですね。中央メディアには呆れかえっています。今頃ですか?と。
東洋経済誌は昨年8月22日付で中村正毅記者が「保険の『不正請求疑惑』めぐり大手損保が大揺れ。中古車大手ビッグモーターの組織的関与が焦点」として詳細に報じています。長くなりますが要約して引用します。

「車両修理費用の水増し請求が表面化したのは2021年秋。損保の業界団体に内部通報があったことがきっかけだ。ビッグモーターと取引のある損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社は22年2月以降、修理費の請求書類のサンプル調査を実施。全国の33整備工場のうち25工場で水増し請求が疑われる案件が80件超見つかったという」

中央メディアは、2021年秋の問題を23年夏に大騒ぎしているわけです。メディアは調査報道が仕事です。個人消費者の保険金に関わるもので社会問題です。21年秋時点で損保業界団体筋から情報を得ていた記者もいたでしょう、でなければメディアの看板が泣きます。なぜ今頃なのでしょうか?
東洋経済報道以前からBM社の営業姿勢にはネット上で批判があり、動画サイトで少なからぬ自販業者が指摘していました。何年も前にCOC会員は「あの店に入ったら買うまで出られない」と笑っていました。

膨大な状況証拠に加えて内部告発が寄せられていたのに、中央メディアは完全にスルーしていました。大手スポンサーへの忖度と考えるしかありません。
俳優・佐藤隆太のCM辞退情報と軌を一にしての手のひら返しの中央メディアの報道攻勢に、BM社・兼重社長が記者会見を開きました。
「調査報告書を見て現場の行為に愕然とした」と“現行犯スタッフ”を刑事告訴するとまで言い切りました。
調査報告書は今年1月末に発足した特別調査委員会が、内部のヒアリング等で6月末にまとめたものです。兼重社長はその報告書で初めて実態を知ったと明言しました。

先述の東洋経済中村記者の「8月22日付記事」にBM社の見解があります。
「(水増し請求は)『工場と見積作成部署との連携不足や、作業員のミスなどによるもの』『意図的なものでないことを確認している』などとし、兼重宏行社長の指示をはじめ組織的関与はないと主張」
この記事の取材時点でBM本社は反論しているのですから、今年6月の調査委員会報告を待つまでもなく、取材によってBM本社は「水増し請求疑惑」を認識していたことになります。本当に兼重社長が知らなかったとすれば、けっこう深い企業論になります。それは「石油村」に通じてしまいます。
BM社は
①同族企業
②非上場企業
③創業者子息の存在
です。この構造は石油村の大部分の企業に当てはまります。
この組織は、トップが専制君主であって下の人間がものを言いにくい構造です。そして経営者に忖度して耳に障る情報を下で揉み消したこともあるはずです。
私も同族企業にいたので、社長の記者会見を見ていて「この人本当に知らないかも」と思いました。

そして創業者子息にありがちなのは、一流大学卒留学とか大企業勤務といった「箔付け」です。ステレオタイプとしては、SS実務よりもお金の流れに関心があって、数字の結果としての数量×粗利にこだわります。
BM社では子息が実務に入ってからノルマ縛りが強くなったと多くの元従業員が証言しています。
だから、石油村でBM社の話は対岸の火事ではないのです。BM社の事件は、同族経営が陥りがちな教訓であると理解すべきなのです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206