COCと独立経営<854>「EV新車販売とガソリン高」 – 関 匤

私が大阪の街へ出ると必ず定点観測している場所が、天王寺公園茶臼山エントランスエリアにあるテスラの給電スペースです。
公園の駐車場に向かうエントランスにあるファミリーマート前の駐車場に5カ所設置されています。コンビニの向かい側は大型のカフェになっています。給電の時間待ちを退屈せずに過ごせる場所でもあります。

いつ見ても2~3台が給電中で、私からすると意外にEV(テスラ)が動いているという感覚です。お盆に訪れたら5台全てが埋まっていました(写真)。

5台の給電スペースが埋まっていた大阪茶臼山エントランスエリア
5台の給電スペースが埋まっていた大阪茶臼山エントランスエリア

気になって統計を調べてみました。自販連のデータですが、2022年度の新車乗用車販売に占めるEVは3万1600台となり、初めて構成比が「1%」を超えました(1.42%)。さらに、今年1月から7月までの新車販売は累計で前年比168%と勢いがついています。構成比が「2%」に高まりそうです。

そして、EV販売台数の約半分が輸入車です。大阪は東京、神奈川、愛知に次ぐEV登録台数なので、茶臼山の給電をテスラが埋めるのもむべなるものがあります。給電中のドライバーに聞いてみたら、彼はテスラで大阪~東京間を往復することが多々あるそうです。高速SAで1回ずつの給電でまかなえると言っていました。

もう1つ統計ですが、全軽自協の軽乗用車新車販売ランキングで、2022年6月に発売された日産のEVサクラが22年度で3万3000台強を売って14位につけています。2カ月少ないので、フル年度で販売していたら、スズキジムニーや日産デイズと並ぶか超えていたでしょう。
23年4月以降は、昨年ほどの勢いはないものの、ランキング順位を12~13位に上げています。

私も“ガソリン脳炎”の1人であり、EVの拡大には懐疑的ではあります。一方、ジワジワと伸長する新車販売の勢いが、この先数年でどういう形になるのか非常に気になるところです。

東京電力エナジーパートナーのHPに「1万キロメートル走行時のガソリン代金とEV電気料金の比較」があります。EVは31円/kWhの家庭充電を前提としています。
試算では、ガソリン代10万9890円に対して、電気料金は5万1646円と、EVの負担はガソリン車の半分です。
しかも試算のガソリン価格は「165円」です。激変緩和策の補助金が徐々に減額されており、相対的にガソリン価格が高値に動いています。8月第3週で全国平均が180円前後です。原油相場が横ばいで推移すると10月には「200円市況」に突入します。東電試算よりも電気の優位性がはるかに高まります。

こういうシンボリックな価格が登場すると消費者心理がどのように反応するのか気になります。
先述の自販連統計を見ると、2019年にEVの新車販売台数が跳ね上がっています。この年は10月から消費増税が行われています。EVを買うか迷っていた人たちが、増税で背中を押されたものと想像されます。
増税と同じように、明らかにガソリン価格が高くなることが分かっているので、今年のEV販売の勢いはガソリン高を織り込んでいるかもしれません。

元売会社の2023~25年の中期経営計画を見ると、「2030年に22年比で国内石油需要20%減」を見込んでいます。そして大手3社ともに、SSをEVシェアリングや電力事業を使った給電拠点に位置付けています。
しかし、PBは独立系ゆえに元売EV対応の枠組みに入ることはできません。給電といったありきたりのサービスではコンビニやカフェのある茶臼山にかないません。
EVが来たがるような店舗に新しい魅力をどう構築するか、難しいけれど挑戦しがいのある経営テーマです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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