COCと独立経営<860>免許保有者が減少に転じていた! – 関 匤

COCの研修会で、毎回、新しい試みをしているSS企業を紹介してくれる講師がいます。事例を聞いていると、「ガソリンスタンド」ではなく「店舗経営」のあり方を考えている方ばかりです。
とりわけ、1SSのサブ店さんの後継者に多く見られます。若いこともありますがサブ店という立場ゆえに、元売や石商がどうといった話には関心が低く、また先代と違って石油業界でいい思いをした経験がないことも影響しているようです。

この稿で紹介しましたが、ある地方都市の1SS店は、店内のコーヒーサービスから始まって、食品自販機の設置、SS空地での焼きだんごの調理販売(消防法クリア)を経ながら、飲食を研究し資格も取得してテイクアウト専門の飲食店を、FCでなく単独で立ち上げています。
事業を飲食に広げた動機は、経営者の危機意識にあったそうです。

1つは「エネルギー転換」。
長年のLPG販売を通じて、1人の顧客と給湯・厨房機器、住設工事まで深く付き合ってきました。しかし、オール電化に変わると全ての関係が消滅します。
もう1つは「高齢化と免許返納」です。
返納した瞬間、顧客とSSは無関係となります。経営者は、売り上げや利益への影響はもちろんですが、それ以上に長年の顧客との関わりが消えることに(地方ゆえに)寂しさを覚えていたそうです。

以前の稿でも書きましたが、LPGやSSの関わりがなくなっても、顧客との関係を維持したいというのが飲食事業の動機にありました。
ここで「免許返納」の実態はどうなっているのか気になりました。

「年40万人の免許返納者数」 ※警察庁「運転免許統計」より作成
「年40万人の免許返納者数」
※警察庁「運転免許統計」より作成

警察庁のデータですが、2010年代に入ってから急増しています。
2013年度は13万人でしたが、以降増加を続けて16年度32.7万人、17年度40.5万人と大台に乗り続け、19年度には57.6万人に達しています。東京池袋の高齢者による母子死亡事故が影響したと考えられます。
20年度から減少傾向ですが、依然として40万人台にあります。返納時の年齢は75歳前後です。70-74歳の人口は75-79歳に対して「3割強多い」ために、返納者数が再び増える可能性があります。

そして、これは私が不明を恥じることなのですが、「免許保有者数」そのものが2017年を機に減少に転じています。つまり新規取得者数が返納者数(死亡者含めて)に追い付かなくなっているのです。
高齢化の切り口でも調べてみました。

内閣府「高齢社会白書」にデータがあります。2022年で65歳以上人口は29.0%です。地域による温度差があって、トップの秋田県は38.6%と4割に近付いています。一番低い東京都で22.8%です。
内閣府白書は「2045年予測」として、秋田県は50.1%!という数字を弾き出しています。全国平均が38.6%と現状の秋田県並みになるという予測です。

前回書きましたが、私はガソリン消費の減少は、自動車サイドの急激な燃費向上にあると考えています。しかし、返納に伴う免許保有者の減少という環境に入っているわけです。
この傾向は、乗用車保有台数にもボディブローのようにジワジワ影響を及ぼしそうです。SSビジネスとしては、先述の1SS店にならって1台1台の顧客に寄りそうしかないですね。ビッグモーター的なキャンペーン発想の売り込みはご法度です。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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