vol.730『待つ』

『東京ディズニーランドで、ミッキーマウスのキャラクター誕生からちょうど90周年となった18日、人気アトラクション「ミッキーの家とミート・ミッキー」に多くの来園者が訪れ、最大で11時間待ちとなった。運営会社オリエンタルランドは「公式な記録はないが、11時間の待ち時間は聞いたことがない」としている』─11月18日付「共同通信」。

11時間…しかも、あの“ねずみの着ぐるみ”と一緒に写真を撮るだけのために、と思うと「スゴイねぇ~」としか言いようがない。何がすごいかといえば、まずは特別なイベントを催したわけでもないのに、それだけの人々を集めるミッキー・マウスのバリュー。さらに、来場者に“11時間待ち”という告知ができるTDLのステータス。そして、何と言っても11時間も待ち続けることのできる人々の忍耐力。ただただ恐れ入るばかりだ。

考えてみれば、わたしたちの人生のかなりの部分は、待つことのために費やされている。商店で順番待ちの列に並ぶ。レストランで注文したものが来るのを待ち、内科でも歯科でも、自分の番が来るのを待つ。バスや電車も待つ。ある調査によれば、ドイツ人だけでも、交通渋滞の中でただ待つだけのために年に47億時間を失っているという。それは平均の寿命7、000人分に相当するのだそうだ。

19世紀の米国の詩人ラルフ・エマソンは、「人生において、待たされることで失われる時間がいかに多いことか」と嘆いた。なぜ嘆いたかと言えば、それによって人の持つ最も貴重な資産、つまり「時間」が奪われてしまい、それは永久に取り戻せないからだ。同様の考えからベンジャミン・フランクリンが語った、「時は金なり」はあまりに有名な格言だ。この言葉が語られてからおよそ250年が経ったが、人類はいまも、より少ない時間で物を作ったり、サービスを提供するために努力を注いでいる。そうすることによって、文字通りの「金」、つまり利潤が得られるからだ。

ガソリンスタンドでの待ち時間は、セルフ方式によって随分短縮されたと思う。いま来たかと思えば、あっという間に出て行ってしまう。代金決済をプリカやクレカなどにすることも時間短縮に貢献している。お客様に給油していただくことは、「ノーサービス」ではなく、「セルフサービス」なのであって、お客様に燃料と併せて「時間」という商品も提供しているのだが、どうもそこのところがGS業界ではよく理解されておらず、変な負い目を感じて、セルフは必要以上に安く売らなければいけないと考えているようだ。「時」が「金」になっていない。

それはともかく、待つことはわたしたちだれもが避けることのできない現実である。命に関わることでもない限り、待つことに慣れるよう努めなければならない。赤ちゃんは、空腹や不快を感じると、すぐに対応してくれるよう要求する。望みどおりにしてもらうには待たねばならないときもあるということを理解するのは、少し大きくなってからだ。必要な場合にどのように辛抱強く待つかを心得ていることは、分別のある大人であることのしるしといえる。普通、自分が待っている物事は、必ず得られるものであり、それを得るために待つ価値があるとの確信があれば、待つことは比較的易しくなるだろう。ただ、私はミッキーの誕生祝に11時間も待つ価値があるとは思えないが…。

GS業界は年々厳しさを増しており、このまま待ち続けても、果たして明るい未来がやってくるかどうか疑わしい。ただ、為す術なく待っているのではなく、その時間を有効に活用して、来るべき時代への備えをすることも必要だろう。マハトマ・ガンジーはこう述べている。「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ」─。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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