vol.649『肩こり』

毎年、春の到来は私を憂鬱にさせる。その理由は二つ。ひとつは、灯油のシーズンが終焉を告げ、売上高が落ちること。ホント、一年中寒ければいいのにと恨めしく思ったりする。一方で、ぽかぽか陽気に誘われて人々が頻繁に出かけるようになりガソリンの売上げがアップする…なんてことは、もうこのご時世、あまり期待できない。GS業界では、総じて前年販売量の維持すらままならない状況なのに、相変わらず採算を顧みない販売競争が繰り広げられることだろう。ますます憂鬱になる。

私が春を嫌うもうひとつの理由は、花粉症。ある統計によれば、地域差はあるが、国民の三人に一人が花粉症だという。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、そして目のかゆみ。それに加えて、私の場合は肩こりがひどくなる。鼻のかみ過ぎで肩がこるのかと思いきや、実は花粉症と肩こりには因果関係があるということを最近になって知った。

人間の体の内臓やの血管や分泌腺はすべて自律神経によって統御されている。その自律神経は、交感神経と副交感神経という正反対の働きをする二つの神経によって成り立っている。交感神経は活動している時や緊張している時にはたらく。一方、副交感神経は休息している時、リラックスしている時、眠っている時にはたらく。つまり、昼間は交感神経がはたらいて活動しやすい状態にし、夜間は副交感神経がはたらいて昼間の疲労やダメージを回復する仕組みになっているのだ。

鼻水や涙を出したり、くしゃみをするのは副交感神経のはたらきなのだが、これらを花粉のせいで昼間に頻繁にやらかしていると、交感神経が“副のヤツ、なんで昼間に仕事してるんだよ。いまはオレの時間帯だぞ”と過剰反応し、優位に立とうと頑張りだす。その結果、血管を収縮させ、血圧を上げ、筋肉を硬くさせてしまい、肩こりや頭痛を引き起こすということらしい。しかし、その逆に、自律神経のバランスが崩れたから花粉症が悪化するという説もあり、どちらが先かはいまひとつはっきりしていない。

いずれにせよ、自律神経のバランスが崩れると、体に様々な変調・不調が生じ、放っておくと、ガンや心臓病、うつ病などの要因ともなる。自律神経のバランスを正常に保つには、暴飲暴食を避け、睡眠時間を十分に取り、適度な運動を行ない、ストレスを溜め込まないようにし…等々“そんなことはわかっとる、それができたら苦労せんわい”と言いたくなるようなことが列挙されており、もはや現代社会人の大半にとって、健全な自律神経を保つのは不可能なことのように思える。

石油業界は、来月からシェア50㌫超のガリバーが誕生し、大きくバランスが崩れることになる。JXTGがガソリン市況にどのような影響をもたらすのか。副交感神経のように、業界を“安静”へと導くか、それとも交感神経のように、業界全体に緊張した状態を生じさせるか、他の元売は見きわめようとしている。いずれにせよ、まともに当たって勝てる相手ではない。過剰反応すれば相手もそれに応じ、結局業界の自律神経はガタガタになってしまう。

ところで、肩こりといえば、ディー・エヌ・エーが運営していたヘルスケア情報サイトが“肩こりは幽霊が原因”という記事を掲載したため、「非科学的だ」などと批判を浴び炎上、同社執行役員が辞任する騒ぎになっている。あまりに馬鹿げた事件だが、GS業界には、ガソリンを安く売り続けるよう囁き続ける幽霊にとりつかているんじゃないかと思えるような人たちがいる。彼らがエゴイスティックな安売りの呪縛を断ち切らない限り、GS業界はこの先もずっと、肩こりや頭痛、めまいや倦怠感に悩まされることになるだろう。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治

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