vol.657『マックとセブン』

いまから77年前の5月15日、米国カリフォルニア州南部のサンバーネーディーノという街で、モーリスとリチャードのマクドナルド兄弟が開業したドライブイン・レストランが「マクドナルド」の始まりだった。当初は、ホットドッグ屋だったが、工場式のハンバーガー製造法やセルフサービスの仕組みなどを考案した上で1948年に再オープンしたのが、現在の「マクドナルド」の原型と言われている。当時ミルクシェーク・マシンのセールスマンだったレイ・クロックがこのシステムに感銘を受け、フランチャイズ化を提案する。マクドナルド兄弟は経営権をクロックに売却、その後世界屈指のファーストフードチェーンとなった。

「マック」成功の最大の要因は、マクドナルド兄弟が編み出したシステムを進化させた、「MFU」(メイド・フォー・ユーの略)と呼ばれる商品供給システムだ。厨房では、集中調理工場から届けられる食材を焼いたり揚げたりするだけで細かい調理の必要はない。焼く鉄板や揚げ油の温度、時間も定められているため、若干の訓練を受ければ誰が作っても同じ大きさ、同じ形、同じ味の商品が提供できる。そして、セルフ方式。注文した商品をカウンターで受け取り、自分でテーブルへ運ぶか、持ち帰る。いまでは当たり前のこの方式を標準化したのも「マクドナルド」だ。

その「マック」が昨年夏から首都圏の一部の店舗で実験導入したのが、セルフレジ。米国ではすでに広く導入されているらしい。注文機のタッチパネルを押して商品を選択、支払いは電子マネーで。“ミスオーダーのイライラとおさらばできる”とか“コミュ障にはうってつけ!”といった評価もある一方、“スマイルゼロ円はなくなるのか?”などの反応もあるとか。(笑) しかし、私が注目したいのは、「マック」が電子マネーによる決済へシフトしようとしていること。今後、セルフGSでも電子マネーの導入が進むことだろう。

現在、私の店では磁気PETカードを使用しているが、コストや安全性を考えると、近い将来非接触型カードに切り替える方が良いかもしれない。ただし、GSでの非接触カードによる決済には、それはそれでややこしい問題もあるのだが、それはまた別の機会に。いずれにせよ、コストカットとスピードアップの両立を目指して「マック」はいまも改革を進めている。業種は違えど、チェーンオペレーションの先駆者がやろうとしていることは、いずれGS業界のシステムにも影響を与えるだろうから、注視してゆきたい。

5月15日の日付の話に戻ると、この日はいまから43年前に東京江東区に「セブン-イレブン」の日本一号店がオープンした日でもある。「セブン」は、1927年、米国テキサス州で生まれたコンビニエンスストア大手で、「イトーヨーカ堂」とライセンス契約を結び、営業を開始した。1980年代になって本家・米国の「セブン」は経営不振に陥り、1991年に「ヨーカ堂」が買収。現在、日本国内に1万9千ヶ所、米国でも、先ごろ、テキサス州の中堅コンビニストア「スノコ」からコンビニとGS計約1100店舗を取得し、1万ヶ所体制を整えつつあるとのことだ。コンビニとGSは、米国の車社会にとっては切っても切れない関係だが、日本ではどうだろうか。

私が注目しているのは、このほどJXTGの管理下に置かれることになった、「セブン」併設GS「エクスプレス」が、今後、新会社においてどのような位置づけになってゆくかということ。例えば、旧エネオス系GSは「Tポイント」を販促ツールとして用いているが、旧TG系GSのそれは、「ナナコポイント」。しかも「ナナコ」は、先に述べたチャージ式の非接触型カードで、ただポイントをためるだけのカードとは仕組みが違う。「ナナコ」へのチャージ額は、「セブン銀行」の資金運用に直結していることを考えると、GS併設店舗の方が、一人当たりのチャージ額が大きいだろうから、金融サービスの強化を目指している「セブン」としては、今後もGS併設店舗を増やしたいと考えているのではないか。そうだとすれば、将来、日本国内でも「セブン」が大手GSチェーンを買収するなんてことがあるかも。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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