vol.662『明るいニュースはないか?』

ガソリンスタンド関連の地方ニュースを二つ。6月17日付「静岡新聞」には『浜松コストコ、9月1日開業 併設給油所は8月5日』の見出し。静岡県内に初出店で、浜松市東区の「イトーヨーカドー」店舗跡地に売り場面積約1万平方㍍の店舗となる。先行開業するGSは年中無休、営業時間は午前7時半~午後8時半。セルフ式で16台同時給油。例によってコストコ会員カード(クレジットまたはプリペイド)が必要になる。

「コストコ」のGSは、これで7ヶ所目。浜松市東区には地場有力GSが密集しているらしく、価格競争の激化は必至と見られている。愛知県でも2015年11月に、常滑市の既存店敷地内にGSがオープンし市況は壊滅、公取による指導が入ったものの、いまも“陥没地域”となっている。「コストコ」は今後も、GS併設出店を積極的に進めるとのことだから、我々小規模事業者はただただ“災い”が降りかからないよう願うのみだ。

6月6日付「福島民報」には、東京電力福島第一原発事故に伴い帰還困難区域となっている福島県双葉町長塚の6号国道沿いで5日、同町の燃料会社「伊達屋」がGSの営業を再開したと報じられている。再開するためには、採算性や店舗復旧、除染など多くの難題があったが、社長の吉田知成さんは「明治時代から続いてきた会社を閉めるわけにはいかない」との思いで再開にこぎつけたという。

同じく6月16日付の「福島民報」には、居住制限区域が4月に解除された福島県富岡町夜の森で、19日、「コムロ・ENEOS夜の森SS」が再開するとの記事。経営者の古室良典さんは、震災によって施設は損傷し、隣にあった自宅も全壊したが、ガソリンを求めてやって来る人たちのために夜通し給油を続けたという。『原発事故で、住み慣れた富岡町からの避難を強いられても、店を必ず再開させるという気持ちは失わなかった』─。

念願かない、再オープンを成し遂げたGS経営者の熱意と努力に敬意を表したい。こういう人がいるかと思うと、まだまだ“ガソリン屋”も捨てたモンじゃないなと思う。恐らく、これからも“いばらの道”が続くことだろう。それでも、被災した地域の復興のためにとの思いが、震災後6年が過ぎて再オープンにつながった。石油元売は、このようなGSにこそ事後調整でも何でもやって支援すべきではないか。また、役所も消防法などの規制を大幅に緩和することで、コスト負担を軽減させ、地方、とりわけ激甚災害地のインフラの早期復旧を助けることができると思う。

それにしても、あの壊滅的な災害を被った地でもGS経営が再開できることを考えると、「コストコ」進出は、GS経営者にとっては地震や津波よりももっと破壊的な災禍といえるかもしれない。放射能によって周辺区域が危険にさらされるように、ひとたび価格戦争がはじまると、市況陥没区域となり、GS経営は絶望的な状況に追い込まれる。元売や組合がどれだけ市況是正という“除染作業”を行なっても、一向に環境は良くならない。

まあ、そんなことを私如きが心配しなくても、賢い人たちがちゃんと考えてくれることだろう。そう願いたい。しかし、きょう(6月19日)付の「日経ビジネス」には、『石油再編の果て─迷走する経営、爆発する工場』と題する特集記事が。「窒息する販売店」、「薄利スパイラルの奈落」などおどろおどろしい副見出しが続いている。どれどれ、怖いモノ見たさで読んでみようか─。

う~ん…やっぱり読まなきゃよかった。系列店にいる人も、独立系でやっている人も、気が滅入るようなことばかり書かれている。これからますます恐ろしいことが起こりそうだ。この業界が元気になるようなニュースやレポートはないものだろうか…。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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