vol.674『さらば、ゼネラル石油』

恐らくそうなるだろうと思っていたことなので、驚くことでも何でもないが、GS業界ではそれなりに話題となっているようなので取り上げる。JXTGのブランド統合の話─。

9月8日付「油業報知新聞」によれば、エネオス、エッソ、モービル、ゼネラルの四つのブランドで営業している系列GS1万3568店(7月末時点)を、2019年度中に「エネオス」に統一するとのことだ。すでに1万2百店あまりは「エネオス」マークなので、残りの約3千3百店のGSが“マーク替え”となる。

ブランドを統合することのメリットは、顧客認知度の向上や商品開発の効率化など幾つかあろうが、やはり一番の狙いは、旧・東燃ゼネラル系の従業員や特約・販売店主に対して“あなたたちは「エネオス」の一員になったんだよ”としっかり理解させることではなかろうか。この件に関し「日刊工業新聞」の記者がこんなツィートをしていた。

『「多すぎるんですよね」。8月にJXTGエネルギーの担当者と名刺交換した際に、私が名刺に並ぶ4ブランドロゴに驚くとこの言葉が返ってきた。身内からすら批判めいた声が上がる状況は今回のブランド統一を予感させた。ちなみにその担当者は旧JXエネルギー出身。勝者の余裕か』─。

JXが“勝者”と呼べるかどうかはともかく、やはりブランドが消える側には、一抹の寂しさや切なさがあるかもしれない。何せ、三つとも1960年代に日本に掲げられ、半世紀以上に渡って存続してきたブランドだ。せめて「エネオス」と「エッソ」をくっ付けて「ENESSO」みたいな新ブランドにしてみたらよかったかも。

私個人としては、やはりかつて特約店だったこともあり「ゼネラル」のマークに思い入れがある。炎をかたどった赤いラインの中に「ゼネラル」とカタカナ(!)の表記。青を貴重としたキャノピーで、全国に約5百ヶ所あるらしいが、GS検索サイト「gogo.gs」によれば愛知県内では16ヶ所、名古屋市に限ればたった5ヶ所。もはや絶滅危惧種のような存在だったので、このたびの衣替えによって、お仲間が一気に増えることになる。

EMGが統合されるまでは、「ゼネラル」はエクソンの子会社でありながら、三井物産燃料部の流れをくむ民族系(死語)的な社風の元売会社だった。むろん事後調整もしてくれた。1980年代後半、それまで特約店に任せっ放しにしていた現金客を、一元的に集客・管理する会員システム「TIPS」を開発、他社に先んじて現金会員「UNOカード」(カードゲームの「UNO」とは無関係。ネーミングはゲームの方が先)を発券し、販売シェアを伸ばす。時折りしもバブル景気の真っ只中。販促費をじゃんじゃん使って“売れよ、伸ばせよ”の狂想曲がGS業界全体に鳴り響いていたことを思い出す。バブルがはじけ、景気後退と共に、石油元売の“夏の時代”も終わりを告げ、一社、また一社と姿を消し、とうとう事実上3社にまでなってしまったわけだが、とりわけEMGマークのGSは、現金客が主流となった今日のGS業界において、開拓者のような役割を果たしてきたと思う。

そのむかし、まだ現金価格を店頭表示するのが“ご法度”だった時代、ゼネラル石油の支店長や担当者と言い争ったことを思い出す。「現金会員が一番欲している情報は“価格”ですよ。販促費使ってDMやチラシで集客しなくても、価格看板をバーンを出せばそれでいいじゃないですか」。「まあ、あんたの言うことはもっともだけどさ、それじゃあ市況が崩れて、掛売りがメインの系列店がすぐ文句言ってくるんだよ。ここはひとつ上手いことやってよ。ね、販促費はあとで調整するから」─。馬鹿馬鹿しくも、懐かしい時代のひとこま。もっと早くPBになっていれば良かったかなとも思う。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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