vol.704『郵政記念日』

『日本郵政(JP)グループが、正社員のうち約5千人の住居手当を今年10月に廃止することがわかった。この手当は正社員にだけ支給されていて、非正社員との待遇格差が縮まることになる。「同一労働・同一賃金」を目指す動きは広がりつつあるが、正社員の待遇を下げて格差の是正を図るのは異例だ』─4月13日付「朝日新聞」。

「同一労働・同一賃金」は、安倍政権が今国会の最重要法案とする働き方改革関連法案の柱の一つだが、本来は、非正社員の待遇が、正社員の待遇に引き上げられることによって経済成長を促すことが目的だったのだが、今回は真逆の出来事が生じたわけだ。

事の発端は、今年の春闘でJP労組(組合員数約24万人)が、非正社員の待遇改善を図るべく、正社員だけに認められている扶養手当や住居手当など五つの手当を非正社員にも支給するよう求めたこと。これに対し、経営側は「年始勤務手当」については非正社員への支給を認めた一方で、一部の正社員を対象に住居手当の廃止を逆に提案。当然組合側は反対したが、廃止後も10年間は一部を支給する経過措置を設けることで折り合ったとのことだ。

なんだか“やぶへび”みたいな結果にも思えるが、労使間で、それもJPのような巨大企業において、手当ての廃止が合意されるということはあまり聞いたことがない。空前の人手不足の中で、グループの半数を占める非正社員のあいだで不公平感が高まり、離職が進むようなことになれば、正社員にも弊害が及ぶことは必至。とはいえ、正社員とまったく同じ給与水準に引き上げたら会社がもたない。そんなこんなで今回は“正社員が泣く”という異例の合意に至ったのかなと推測する。

GS業界も、今後、「同一労働・同一賃金」を実現するためには、正社員の賃金を引き下げる方向で対処せざるを得ないだろう。特にセルフスタンドでは、業務において正社員と非正社員の違いなどほとんどない。というか、GS業界はすでに人手そのものを必要としないところまで来ている。あとは規制が緩和される日を待つばかり。中国では今年中にも、ドライバーが運転席から降りることなく給油できる“全自動無人給油所”が登場するかもしれないというのに、日本のGS業界は依然、人件費のかかる仕組みのままだ。セルフスタンドが認可されて20年が経つが、ほとんど進化していない。先回も書いたが、旧態依然とした制度が、イノベーションを阻み、業界を衰退させる。

JP事業の三本柱である、郵便、金融、保険も、今後AIが人間に取って代わる業種の最たるものだ。ロボットは24時間365日、文句一つ言わずに働き続けるわけだから、人間が“労働者の待遇改善”などと言っていられるのはいまのうちで、あと10年もすれば、今度は“大失業時代”が来るかもしれない。そうなったら、機械が正社員で、ほとんどの人間は非正社員になってしまうだろう。それでも雇ってもらえるだけましか…。

ところで4月20日は「郵政記念日」。いまから147年前、日本でそれまでの飛脚制度に代わって郵便制度が始まったことにちなんだ記念日である。調べてみると、郵便物は1997年をピークに減少が続き、3分の2ほどになっている。その中には、開封することもなくゴミ箱行きとなる大量のダイレクイトメールなども含まれているから、実質はもっと減っているだろう。明治時代から続いてきた通信システムも、いまや電子化によってその存在自体が危うい状況だ。そういえば、最後に手紙を自筆で書き、切手を貼って投函したのはいつのことだっけ。だれにどんなことを書き送ったんだろう。まるで思い出せない。みなさんはどうですか?

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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