vol.707『#新入社員 辞めた』

毎年5月の連休明けになると、話題になるのが「五月病」。新入生や新入社員のように新しい環境に入った人が、精神的に不安定になる状態のことをそう呼ぶのだが、医学的には「適応障害」の一種と診断される。新しい環境に適応しようと一ヶ月がんばったあと、大型連休を取ることで緊張の糸が切れてしまい、倦怠感や無気力感に襲われてしまい、ひどい場合は重度のうつに陥ってしまうこともある。

GS業界には“五月病患者”はあまりいないんじゃないだろうか。まず、新卒者として4月から入社してくるような若者が少ないということ。入社式を行なう大手GSチェーンでも、それまでに学生時代にアルバイトで働いていて、そのまま正社員になったという人が多いと聞く。そういう人たちは、概ね仕事の内容や、会社の組織が分かったうえで入ってきているので、職場は“新しい環境”ではない。

もう一つの理由は、大型連休を取れるような職業ではないということ。公務員や製造業、金融業などの方々が休暇を楽しんでいるあいだ、私達は交替で店番をしなければならない。“お出かけ前のカーケアを”などと声かけし、ワックス洗車やオイル交換の目標を達成すべく、普段にも増して仕事に精を出さねばならない店もある。緊張の糸が切れてしまうような余裕などないというわけ。

しかも、昨今ではGS業界に限らず、多くの職場で、GWを待つことなく新入社員が辞めてしまうという事象が増え続けているとのこと。多くの業種が深刻な人手不足に陥っている中で、職場からは落胆や諦めの声があがっている。ツイッターで「#新入社員 辞めた」で検索すると、つぶやきが出るわ出るわ…。

『昨日歓迎会をした新入社員、本日退職の一報に事務所ざわつく。最速レコードが更新されてしまった。まだ健康診断の結果も出てないぞ』『研修中の新入社員1人すでに辞めたんだけど…どんだけ経費かけて雇ってどんだけ人件費と労力と時間を費やして研修してやってたと思ってんだか』『取引先の会社の新人君が辞めたらしい。会社の気風があわない、営業職があわない。これが理由らしい。すぐ辞めることを否定するつもりはないが、そんなにすぐわかるもんじゃないだろってのが本音。あわないなら辞めていいみたいな論調多いが、それは違うと思うよ』─と、いまどきの若者へ苦言を呈するつぶやきがある一方、同情的、自虐的なつぶやきも多い。

『うちの会社、基本給が安くて手当ての割合が高く、しかも長時間労働だから仕方ない。上司は何だかんだ言っているけど、個人的には、「早く気付いて、早く決断してよかったね」という感じ』『新入社員に今年入ってからのぼくの労働時間言ったらやめちゃいました。人類最速2時間辞職です』『新人君が辞めるときに「ここが続かないならほかでも続かないぞ」みたいなこといってる上司に「この業界とこの会社しか知らない人がなんで断言できるんですか?」といって辞めた新人さん知ってる』『新入社員3日で辞めたんだけど3日で会社を判断するとは恐るべき慧眼の持ち主』─笑い事じゃないんだけれど、笑ってしまう。

GS業界人の一人としては、いつまでも“長時間安売り耐久競争”を続けている現状では、若い人たちに見限られても仕方がないなというのが正直な感想。最後は故・盛田昭夫氏(ソニー創業者)の言葉で締めくくることにする。『私は新入社員の入社式でいつも次のように言うことにしている。「君たち、ソニーに入ったことをもし後悔するようなことがあったら、すぐに会社を辞めたまえ。人生は一度しかないんだ』─。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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