vol.772『スマホ給油』

金融コンサル会社「インフキュリオン」が、全国の16歳から69歳の男女2万名を対象に、消費税率引き上げ後のキャッシュレス決済利用状況を調査したところ、利用者(約1万8千名)の内約半数の人が、利用頻度が増加したと答えた。続いて、決済サービスの種類別に10月の利用状況を聞いたところ、QRコード決済の利用率は、3月時の11.6㌫から消費税率引き上げ後に35.7㌫に増加し、約3倍となった。一方、クレジットカードは77.9㌫と大半を占めるものの、3月と比べて横ばいだった。

この調査結果からも、QRコード決済、すなわちスマホ決済がキャッシュレス決済サービスの中で“独り勝ち”状態で伸びていることがわかる。いちいち財布からカードをまさぐり出すのも面倒になってきたのか、黄門様の印籠よろしく“このQRコードが目に入らぬかぁ!”とスマホをかざすだけで、店員は“ありがとうございました”とひれ伏すと言うわけだ。現在、スマホ決済事業者は乱立状態。政府のポイント還元事業が終わった後は淘汰が進むのでは、と思っていたら、早々と業界トップと2位が統合することに。

『検索サービス「ヤフー」を展開するZホールディングスと無料通信アプリ大手LINEは18日、経営統合について基本合意したと発表した。2020年10月までの統合完了を目指す。計1億人超の利用者基盤を作り、米中の巨大IT企業に対抗する。統合後もヤフーとLINEはそれぞれブランドを維持する見通しで、成長分野として注力するスマホ決済についてもヤフー傘下の「PayPay」と「LINE pay」の両サービスは維持し、加盟店の相互利用などで効率化を図る方向だ』─11月18日付「毎日新聞」。

市場が縮小し出してから泥縄式に合従連衡を進める銀行業界や石油業界とは異なり、成長過程のいまこそより強力な企業となってGAFAに対抗してゆこうという感じで、やっぱIT企業は先を見据えての打つ手が早い。ネット上では、市場の独占を懸念する声があがる一方で、「PayPayとLINE Payが合体したらLINE PayPayPayになるの?」とか「(マルちゃんみたく)赤いYahooと緑のLINE」など大喜利が始まっているそうな。この勢いだと、日本のキャッシュレス化は、クレカ、フェリカを一足飛びにして、スマホ決済へと進みそうな感じだ。

ところで、GSではまだスマホ決済を受け入れるハード・ソフトが整備されていない。フルサービスのGSで、給油後の精算をスマホ決済可能としている店舗があるものの、セルフGSではまだほとんど実施されていない。一部の独立系GSチェーンで、自社発行のプリペイドカードに金額をチャージする際スマホ決済でできる店舗があるが、アイランドでスタッフを介さずに“スマホ給油”ができる仕組みはまだ開発途上だ。

セルフスタンド草創期には、給油が終わった後、客が店内に支払いに行くという“後払い方式”が主流であった。しかし、常時、キャッシャー要員が必要なうえ、払い忘れや入れ逃げなどによる損失も生じるため、外接端末機の開発が進み、今日のようなアイランド完結型へと進化していった。もしいま、手っ取り早くセルフGSでスマホ給油ができるようするのなら、かつての“後払い方式”にすればいいのだが、いまさら先祖帰りするのも能がない。

また、外接端末機にQRコード読取機を取り付けたとしても、スマホ決済で給油する場合は、定額給油にせざるを得ない。だが、仮に3千円給油を指定して計量機を起動させても、2千5百円しか給油できなかったら、残りの5百円はどうやって返せばいいか─。結局、セルフ給油精算システムの要諦は、むかしもいまも、「お釣りをどのような方法で返すか」ということに尽きる。この問題をクリアすれば、ローコストの「スマホセルフ給油システム」を開発することができるだろう。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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