vol.820『ニュース雑感』

今月19日に千葉県印西市のガソリンスタンドでガソリンが混入した灯油1800㍑が販売され、販売会社が回収作業に追われているとのこと。毎年、この時期になると、風物詩のように報じられるこの手のニュース。どうせ、GSのスタッフとローリーの運転手がお喋りなんかしながら荷卸していたんだろう、なんて勝手に決め付けていたが、 一基のが灯油用とガソリン用に仕切られてうて、その仕切りに亀裂が入っていたため混入したとのことだ。いや~、これはコワイ。気をつけていれば防げるという類の話ではない。

一方、今年3月に宮崎市内で起きた住宅火災で、男性二人が焼死体で見つかった事件について、地元警察署は、死亡した男性の一人を容疑者として書類送検した。被害者の遺体のみからガソリンの成分が検出されたことや、容疑者が事件の前日、宮崎市内のGSでガソリン10㍑を購入していたことなどから、「容疑者が殺害目的でガソリンをまいた」との結論に至ったようだ。ガソリンを販売したGSは、身分証明書を確認したうえで、使途についても問うただろうが、まさか“人を殺すため”と正直に答えるはずもない。京アニ事件の悪夢がよみがえる。

ガソリンスタンドがらみのニュースをもう一本。『横浜市でGS3店舗を運営していた「広栄商会」が民事再生法の適用を申請して倒産した。負債総額は申請時点で約24億5千万円。GSの倒産としては今年最大規模。2008年3月期には年売上高約15億7200万円を計上していたが、直近の2020年3月期の年売上高は約9億5000万円にとどまっていた』─11月18日付「帝国データバンク」。

前のコラムでも、GS事業会社の倒産が増加傾向にあることを取り上げたが、この事案により年間負債総額を大幅に上積みさせてしまった。関連会社の不正会計がらみと報じられているが、コロナ禍での販売不振が追い討ちをかけたのだろう。3店舗ともスタッフ給油で洗車、カーケア、レンタカーなど一通りのサービスを展開していたが、力尽きた。

タンク劣化によるコンタミ、携行ガソリンによる殺人、販売不振による倒産…GS経営者が抱いている不安が、この一週間で次々とニュースになった訳で、改めて緊張感を抱いた次第である。だが、そんなこんなも、コロナ第3波が日に日に高波となってゆく恐怖の前に呑み込まれてしまった感がある。だが、そんなこんなも、コロナ第3波が日に日に高波となってゆく恐怖の前に呑み込まれてしまった感がある。よりにもよって、IOC会長が来日したタイミングでの感染拡大。関係者がどれだけ強がっても、開催はますます厳しくなっている。

緊迫した事態に、医療関係者は遂にいままでこらえていた言葉を発し始めた。すなわち“「GoTo」キャンペーンを中止せよ”─。医療崩壊の危機が迫る中、もう政府与党に“忖度”してはいられないということで、いつもは、はっきりモノを言わないコロナ対策本部・分科会の尾身 茂会長までが、「政府の英断を心からお願いしたい」と運用見直しを強く求めた。いくら肝いりの政策とはいえ、いつまでも面子にこだわっていたら、最重要課題である東京五輪が中止に追い込まれるかもしれないということで、菅首相はやむなく「GoTo」キャンペーンの見直しを決定した。

これでまた人の動きが鈍くなるだろう。人の動きが鈍れば、経済は停滞する。GS業界も厳しい年末を覚悟せねばなるまい。この2ヶ月間余り、感染対策の緩みと呼応するように、ガソリン価格も“緩んで”きた。価格サイト「gogo.gs」を見ると、価格ランキング上位には111~114円がずらりと並んでいる。ナンボ儲かるんだ?GS業界もここらで「ふんどしを締め直して」(尾身会長)来るべきコロナ不況の第3波に備えるべきではないか。安売りの“どんちゃん騒ぎ”は、迷惑行為を通り過ぎて、もはや“危険行為”と呼ぶべきかもしれない。

 

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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