vol.858『でしょうね…』

8日放送のフジテレビ「ワイドナショー」で、東京のコロナ感染者数が初の5千人台となった(5日)ことを受けて松本人志が『「5千人超えました」に対して、ほとんどの人が「でしょうね!」なんですよ』とコメント。『この「でしょうね!」の塊を、ものすごいデカい「でしょうね!」の塊を、どこに投げたらいいのかなって』と続けた。

確かに、東京オリンピックの開会式が行われている会場のまわりに人だかりができている様子などが報じられているのを見て、こんなことしていると感染者は増えるだろうな、と思っていたから、今月に入ってからの感染者急増は、「でしょうね」という感じだ。夏休みとなり、都市から地方への移動が活発化すれば、全国に感染者が広がるのは当然のことで、「でしょうね」の範ちゅうの話だ。

また、デルタ株への対応に大わらわとなっている中、ペルーを由来とする新たな変異株「ラムダ」の感染者が国内で初めて確認されたそうで、感染者は30代の五輪関係者とのこと。これもやはり、「でしょうね」。五輪運営委員会は、「バブル方式」で感染を抑え込むと大見得を切っていたが、弁当すら管理できないようではたぶん無理だろうと…。

“オリンピックをやったから感染者が増えた”なんて単純な話を真に受けるつもりはないが、大会閉会翌日にIOCの会長が“銀ブラ”を楽しみ、「不要不急の外出では?」と問われた五輪担当相が「不要不急であるかは、しっかりとご本人が判断すべきものだと思う」と答えるに至って、大勢の人が自粛していることがアホらしくなり、デパ地下やら何やらに繰り出したりしたら…「でしょうね!」。

感染が拡大しても、高齢者へのワクチン接種が概ね終わっているので、重症者数はそれほど増えないとの見立てもあったが、先週から最高数を更新しはじめた。医療機関はもう限界とのことだが、人口当たりの病床数が世界一の国で、なぜそんなことになってしまうのかというと、日本の医療機関のうち約8割が民間病院で、行政の強制力が効かないため、「うちは診ません」という病院が大半だと手の打ちようがないのだそうだ。日本の医療体制の脆弱性を指摘してきた専門家からすると、現在生じている災厄も、「でしょうね」と言わざるを得ない状況なのだろう。だが、急病や事故で救急車を呼んでも、どこの病院もコロナ患者で手一杯と言われて「でしょうね」とあきらめる訳にはいかないわけで、この先、薄氷を踏む思いで毎日を過ごしてゆくことになりそうだ。

コロナも大変だが、いま北九州や中国地方は記録的大雨で被害が出ている。これから1週間、こうした状況が続くという。先月13日から17日には、西ヨーロッパで豪雨により過去100年で最大規模の洪水が発生、各地で多数の死者が出た。おりしも、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が9日に、 産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021~40年に1.5度に達するとの予測を公表した。2018年に想定したより10年ほど早くなるそうで、その結果、「50年に1度の熱波」は8.6倍に、「10年に1度の豪雨」は1.5倍になるとのこと。だが、今回の報告書でもっとも注目されたことは、IPCCが「地球温暖化は人間が原因」と初めて断定したことだという。「でしょうね」。というか、いままでそんなことも断定できずにいたことに驚かされた。

「でしょうね」という言葉は、あきらめや投げやりな気持ちがにじんでいるように思う。そのあとに続く言葉は、「それで?」とか「だから?」だろう。「でしょうね」をだれかに投げつけるというよりは、開き直り、覚悟を決めて、自分自身でなんとかするしかないんじゃないか。実際、11日の東京都のモニタリング会議でも、現在の感染状況について「もはや、災害時と同様に、自分の身は自分で守る感染予防のための行動が必要な段階だ」と指摘している。

GS経営者としては、今後も続くであろう感染拡大と天候不順を見据えて、適正価格で営業を続け、生活の糧を得てゆくしかない。ムキになって「コストコ」なんかと張り合って(名古屋市守山店15日現在 レギュラー138円) 経営が悪化しても「でしょうね」と言われるだけで、だれも同情してくれませんから…。

 

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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