6月28・29日に大阪で開催されていたG20サミットが閉幕。厳しい警備体制のもとで不自由な生活を強いられた地元のみなさん、お疲れ様でした。何せ世界を動かすプレイヤーたちが一堂に会するビッグイベント。世界中のテロリストの標的になっていただろうから、無事に済んで関係者は胸をなでおろしていることだろう。
むかしから“サミットに失敗なし”と言われているそうで、各国のトップが顔を合わせる前に、懸案の問題はそれぞれの事務方のあいだで調整済みとなっており、「今後とも交渉を続けてゆくことで合意した」とか、「引き続き努力してゆくことで一致した」といった共同声明が出ておしまい、といった感じだ。劇的な出来事はほとんど起きない。
そんな中、トランプ大統領が“あした韓国に行くんだけれど、キム委員長、よかったら板門店で会わない?”みたいなノリでツィートし、翌日、軍事境界線をひょいと越えて即席の米朝会談を行ったことには全世界が驚いたようだ。ただ単に目立ちたかっただけなのか、深謀遠慮があっての行動なのか─。とにかくトランプ大統領の予測不能な行動パターンに、世界中が振り回されている感じだ。
それはともかく、世界各国の元首がネット回線を通じていつでも会議を行える時代になってもなお、トップ同士が物理的に顔と顔を合わせて話し合うということは大切なようだ。板門店での米・韓・朝首脳のスリーショットを見ると、世界の多くの人々は、それだけで何だか平和が近づいたような印象を受ける。それがたとえ見せ掛けだとわかっていても。
一国の元首でなくても、人間はみな、人と関わっていたいという欲求を持っている。「集団欲」は「食欲」「性欲」と並ぶ人間の三大欲求であり、知性や理性ではコントロールできないものとされている。一人旅、一人カラオケ、なんなら一人焼肉だってできる、人と一緒にいるより一人でいるほうが好きだ、と思っている人でも、自律神経のバランスを崩したり、思考力が低下したりすることが様々な研究によって明らかになっているという。
例えば、孤独な人は心疾患リスクを29㌫上げるそうだ。これは1日たばこを15本吸うことに匹敵するのだとか。アルツハイマーになるリスクは、2.1倍になり、うつ病やアルコール依存症などの精神的な疾患にもつながる。英国は、これら孤独によって生じる問題が国家経済に与える影響を年320億ポンド(約4.9兆円)と試算、昨年「孤独担当大臣」という新たなポストを設けて対策を講じている。もっとも、英国自体がEUという「集団」から「孤立」しようとしているのだけれど…。
日本は、人と人とのつながりや信頼関係を意味する、ソーシャルキャピタルの充実度のランクが149ヶ国中101位。先進国で最低。ここ最近、社会に衝撃を与えた事件の背景にも、孤独の影があるように思う。しかし、近年は孤独を美化し、「おひとりさま」などともてはやす風潮があり、日本人の孤独化をますます助長しているようにも見える。
「一人」と「独り」は似て非なるものであって、「一人」になって、静かな環境で考え事をしたり、音楽や読書を楽しんだりすることは大切なことだが、「独り」をかこって、引きこもってしまうと、人生を台無しにしてしまう恐れすらある。GS業界に限らず、どの業界にも“一匹狼”を気取る人がいるが、それはその人の生き方なのだから周囲がとやかく言う必要はない。むしろ、そのスタイルによって業界で成功した人も少なくない。だが、そのことと、幸福な人生を歩むこととは別の問題だということもまた真実なのだ。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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