SS経営の大きな流れは系列・非系列に関わらず3つに分かれていると見ています。3つとは、
①直営や優等生の系列SS
②独自業態の系列とPB
③その他
で、このうち「優等生」は、元売標準設計のSSでガソリン、オイルなど元売の重点商品をしっかり売る方向です。「独自業態」は系列SSならマークを揚げてガソリンを元売から買うけれど、収益事業は経営者が独自戦略で進めるケースです。PBでは新規参入者が典型例です。「その他」は、現状維持か、「独自業態」に向かおうとしているか、あるいは出口を探っているかです。
SSという“箱”は同じに見えても経営の考え方は経営者の数だけ多方向に拡散していると感じます。「我々石油販売業界」といった同志的はもはや掛け声に過ぎず、元売との距離感に始まり、頭の中を占める事業への関心の度合いも相当異なるでしょう。
COCという小さな経営者集団を見ていても、10数年前に比べて石油の捉え方に物凄い温度差が生じています。独立系、PBであっても、SS業界の縮図です。まして、再編相次いで系列内変動が起こっているわけですから、2万社のSS経営者の内部で大きな地殻変動が始まっていると見ています。
新規参入を除くと「②独自業態」が一番難しい道のりになります。長年、ガソリンの巨大なキャッシュフロー=資金繰り財源であり、セルフ化以降は個人の才覚よりも装置で稼ぐビジネスモデルに慣れてきただけに、品質差異のないコモディティでありながら経営に大きな存在感を持ちます。
COCでも、総粗利の七割強で稼ぐ会社があります。カーケアで全経費をまかなえる状況にあります。経営者は、ガソリンは主食ではなくカーケア増益に利用する“道具”的な感覚を持ってはいます。しかし、“本籍地・油屋”の本性で、他店の価格やガソリン販促が気になって仕方がありません。1、2%の減販が大きな売上げ減になってしまうからです。
やはりガソリンの存在感が良い意味でも悪い意味でも、独自業態確立に影響します。コストコは会員制倉庫業態を確立しています。会員サービスなので一般SSに比べて、ガソリン利益に対するこだわりは小さいと想像します。それでもキャッシュフローの影響は半端ではありません。
私の推測ですが、コストコは世界で約570カ所のSS併設店を持ちますが、出光昭和シェル並みのガソリン販売量と見ます。すると同社年商13兆円のうち3兆円前後の比重となります。コストコのようなキャッシュフロー経営にとって、ガソリンは戦略商品となります。
ガソリンに振り回されない独自業態確立はハードルが高いなと思います。それでも、独立系の突破口(成長エンジン)はここにあると確信します。
一方、「系列優等生」はもっと難しいかもしれません。「生活プラットフォーム化―デジタル技術活用による顧客接点の強化、小売り新サービスの展開」(JXTG)とか「ダイバーシティ&インクルーシブネスをもとに、環境・社会と調和を図りながら…新たな価値創造に挑戦し続ける日本発のエネルギー共創企業」(出光)といった難解な構想や理念を理解、咀嚼しながら元売の背中に従うわけですから。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局