vol.782『恐怖と疑心』

『厚生労働省によると、2月26日までに明らかになった国内の新型コロナウイルス感染者110人の濃厚接触者らを調べた結果、屋形船での集団発生では1人が12人に、スポーツジムの事例では1人が9人に感染を広げていたことがわかった。政府は、密閉空間など換気が悪く、人が密に集まって過ごすような場所が集団感染の共通点と判断。こうした場所を避けるよう国民に呼びかけた』─ 3月1日付「朝日新聞」。

新型ウイルスよりも“恐怖”と“疑心”の感染スピードの方が速い。空前のスポーツジムブームの最中に降りかかった予想外の災禍。親しくしていただいているGS経営者のTさんは、筋トレが趣味だったのだが、やはり自粛中とのこと。自宅から日進市の店舗までの道路沿いに、最近オープンしたジムが1ヶ所、オープン間近のジムが2ヶ所あるのだが、運営者は頭を抱えていることだろう。

飲食店もかなりの痛手を被っているようだ。歓送迎会シーズンのかき入れ時に、「換気が悪く、人が密に集まって過ごすような場所」を避けるようにとのお達し。マスクをしていては飲み食いできないわけで“酒飲んで消毒するからウイルスなんか怖くねぇ”なんて言っている愚か者を除けば、飲み会なんぞ行く気になれないだろう。閑散とした夜の繁華街の映像からは、店主たちの悲痛な叫びが聞こえてきそうだ。

この数年、中国人を主としたインバウンドへの依存度が高まっていた観光業界の人たちは、まさに奈落の底に突き落とされたような状況といえるだろう。TDLもUSJも今月半ばまでひとまず休園。ある石油商社の営業マンは、バス会社は言うに及ばず、トラック業界も荷動きが鈍くなり、厳しい状況だと言っていた。“GWまでには何とか終息してほしい”という切なる願いが叶うかどうか。

中学校の教員をしている知人に“大変でしょ?”と声をかけたら「大混乱です」─。これから期末テストを実施し、通知表を作り、卒業・終業式に向けて慌しくなる時期に、総理大臣の鶴の一声で一斉休校。仕方がないといえばそうなのだが、教育現場や子育て真っ最中の家庭にとっては試練の日々が続きそうだ。とりわけ、受験・就職を目前に控え、ただでさえナーバスになっている若い人たちが受けるストレスはいかばかりか。

大手企業では、在宅勤務などにシフトしており、思いがけず“働き方改革”が進んでいる。例えば、電通では本社で勤務する全社員5千人が原則在宅勤務となった。それでも業務が続けられるのであれば、元々本社ビルなんていらなくね ? と思ったりする。いずれにせよ、学校がお休みになったうえに、パパが朝からずっと家にいるということで喜んでいるお子さんも結構いるかも。

健康と経済の両面からじわじわと不安が高まっている中で、街行く人々の顔から笑顔がなくなってゆくことを心理学者たちは心配しているという。実際、スーパーやドラッグストアでは、マスクなどの品切れが続いているが、苛立ちを店員にぶつける人が日に日に増えているとの報道もある。医療機関で働く人たちやその家族に対する差別的な言動も顕在化しつつある。怖ろしいことだ。“恐怖”と“疑心”が善良な人々の心を蝕みつつあるのだろうか。

GS業界は、いまのところ新型ウイルスによる直接的な影響は受けていないが、とにかく、息を潜めて成り行きを見守るしかない。エネオスは東京五輪の堂々たるオフィシャルスポンサーだが、もし五輪中止などという悪夢が現実のものとなれば、巨額の損失のツケは…。どんどん悲観的な想像ばかりしてしまうきょうこの頃だ。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
(このコラムに関するご意見・ご感想は、FAX 0561-75-5666、またはEメール wadatradingco@mui.biglobe.ne.jp まで)


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206