予想通り、緊急事態宣言が全国で延長となった。期限は5月末まで。どんな論拠に基づいて5月末までとなったのか、いまのところよくわからないが、今後の感染者数が想定どおりに減少しなければ、再延長、再々延長となるだろう。そんなことにならないよう、とにかく、「三密」を避け、「不要不急」の外出を控えるよう国は呼びかけている。一方で、“コロナ疲れ”が蔓延しつつあり、漸進的な・部分的にでも制限解除を行ってゆかないと、老若男女を問わず、メンタルがやられてしまう人が増えてくるのではと危惧されている。
私はどちらかといえばインドア派だからそれほどでもないが、アウトドア派の人たちは、連日初夏の青空が広がる中、ゴルフに行きてぇ!釣りに行きてぇ!サーフィンに行きてぇ!バーベキューに行きてぇ!と部屋の中で悶絶しておられることだろう。レクリエーションを楽しめないのは辛いけど、もっと辛いのは、やはり商売できず困窮している人たちだろう。息子が先日オンラインでギターレッスンを受けたのだが、師匠のギタリストは、とりあえず2ヶ月先まで仕事がない、と嘆いていたそうな。政府からの支援金なんて、家賃払って、光熱費払って、自動車税払ったら無くなっちゃう、無いよりましだが、それだけじゃ到底やってゆけない。
中国や韓国、台湾などでは制限緩和が始まっており、見切り発車ではとの懸念もあるものの、そんな様子をニュース映像で見せつけられると、“日本はいつまで自粛しなくちゃならないんだ”というイライラがいやが応にも昂じてくる。当然、その矛先は政権与党に。というわけで、今回政府は、自粛延長と同時に、一部解除も視野に入れて、「新しい生活様式」なるものを提示することとなった。
一体どういう生活様式が「新しい」のか。幾つか挙げると、まず『外出はマスクを着用』。当然といえば当然だが、マスクは相変わらず品切れ状態。また、これから気温が上がってくると、マスクをしての活動はかなり息苦しい。『遊びに行くなら屋内より屋外を選ぶ』。どこであろうと人が密集したら同じじゃない?『人との間隔はできるだけ2㍍、最低1㍍空ける』。もうデートはできませんな。『家に帰ったらまず手や顔を洗う。できるだけすぐに着替え、シャワーを浴びる』。水道料金を値下げしてもらえると助かります。『発症したときのため誰とどこで会ったかメモしたり スマホの移動履歴をオンにする』。もはやプライバシーなんか尊重している場合ではないのだ。
『買い物は通販や電子決済を利用し、計画をたてて素早く済ます』。政府が進めようとしていたキャッシュレス化が、思いもよらぬかたちで促進されようとしている。とりわけスマホ決済は昨年8月と今年1月との比較で利用割合が12.2ポイントと急速に増加しており、衛生面だけでなく、レジでの待ち時間を減らすなどの効果もあって今後一層普及してゆくと思われる。
『飲食店での食事は対面ではなく横並びで座るようにし、料理に集中し、おしゃべりは控えめに』。『横並び』で食事と聞いて、松田優作主演の映画「家族ゲーム」(’83)を思い出した。しかも、『料理に集中』ってどういう食べ方?まあ、本音はデリバリーかテイクアウトで、各家庭で食事をしてほしいということなのだろう。その場合は消費税を思い切ってゼロにしてくれないかな。飲食店救済のためにもなることだし。
ほかにも、いろいろな分野で「新しい生活様式」が示されているのだが、何だか「廊下は走らず右側を歩くこと」みたいな小学校の校則を彷彿とさせる内容で、苦笑してしまった次第。でも、作った人たちは大まじめなのだ。いつまでも国民生活を仮死状態にしておくわけにはゆかず、こうしたルールを徹底させつつ、自粛を緩和してガス抜きをしてゆこうというわけだ。果たして、今月の終わりには“出口”が見えてくるのだろうか。仮に見えてきたとしても、また「以前の生活様式」に戻ることはできるのだろうか。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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