5月末の油業報知新聞に元売各社の2020年3月末のSS数が掲載されていました。
総数で22671カ所、前年比▲338カ所です。2010年前後の毎年千数百カ所減から落ち着きましたが、減少基調にあることは変わりません。
非系列のPBも減っているはずです。前年3月末で30070カ所だったので、日本のSS数が30000から台割れは確実です。20000カ所台は昭和42年の28341カ所以来です。半世紀前の数に戻りました。自由化直後から半減です。
一方、昭和42年の1SS当りガソリン月販は42㌔㍑でした。18年度末では1SS140㌔㍑です。販売量は3.3倍になったということです。
昭和42年に無かったのがセルフSSです。仮にセルフが平均の1.5倍の販売量と想定すると、前年度時点でセルフ210㌔㍑、フル73㌔㍑となります。ガソリン販売量は必ずしも利益の指標ではありませんが、客数としては大きな違いになります。この想定で販売シェアのセルフは5割強、フルは5割弱です。
冒頭の今年度3月末の系列SSでセルフは210カ所増えて、系列SSの36.5%となっています。逆にフルは548カ所減少しています。セルフの販売シェアはさらに高まっているでしょう。
あらためて、令和2年のSS数が私の小学生時代レベルというのは驚愕です。ただ、霞が関や業界団体が「SS過疎化」を騒ぎ立てるほどに、大きな社会問題になっていません。高知県四万十市や和歌山県すさみ町などで地域住民などが自主的にSS再開などやっている例はありますが、私の知る限り過疎地対応の事例は10数カ所です。
資源エネ庁が「過疎地協議会」を始めたのは2015年です。本当に“給油難民”が溢れて社会問題化していたら、5年間に数百カ所レベルの過疎地SSがオープンしていたはずです。
先述のようにSS数は昭和42年並みまで半減しましたが平均販売量は3.3倍に増えています。これは自動車台数の劇的な増加が大きな背景にあります。半世紀で日本の乗用車保有台数は20倍増加しています。
もう1つの要因は道路の延伸と舗装による商圏の拡大です。1967年の一般国道の舗装率は10%程度でしたが、現在では90%以上です(簡易舗装除く)。今や土の道を見つけるのが困難なほどで、山の林道でさえ舗装されています。
高速道を含めた道路の延伸と舗装は、確実にクルマの走行距離を伸ばしました。だからイオンやコストコなど大型流通が成長しました。
クルマの行動半径を考えれば、「協議会」で市町村別SS数を出して“過疎だ”と騒ぐのはあまり意味がないと思います。クルマは市町村を飛び越えて動いていますから。
最寄りにSSがないのは不便です。そのぶん燃料ゲージを意識しながら、買い物や仕事の行動圏内でどこかのSSで給油しています。経済性の低い過疎地SSをわざわざ設置しても、肝心の住民がお出かけついでに遠方の安いSSへと素通りするでしょう。
それよりもコロナ禍は従来の社会構造を劇的に変えていくはずです。DX(デジタル変革)は一気に様々な分野で進むはずです。ソーシャルディスタンスの観点からは、AIを背景としてGPS、カメラ、センサー、リモート技術がさらに進化するはずです。リモートでは自宅にいる障害者がカフェ接客するお店も出現しています。完全無人SSの設置も技術的にはとっくに可能です。
SSの数を市町村単位で眺めるだけで、いったい何が業界を進化させるのか理解できません。お陰で「系列SS数」からかなり飛躍してしまいました。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局