西日本から中部地方にかけての集中豪雨は本稿執筆時点で止んでいません。7月9日の油業報知新聞に「九州豪雨、22SSが営業停止」とありました。被災地域の皆様におかれましては、さぞ心細い思いをしていらっしゃるものとお察しいたします。紙面にてお見舞い申し上げます。
九州や中部のCOC会員に確認すると、会社や従業員に被害はないものの、道路の寸断で物流に影響が出ています。岐阜県高山市では陥没や崩落で国道41号線が止まり、東海北陸高速道も一時通行止めとなり陸の孤島化しました。今のところ会員の会社や従業員の被害は聞きませんが、各地で地盤が軟弱化しているので2次災害が心配です。
石油連盟の統計で5月の都道府県別販売量が出ています。
ガソリンが前年同月比76..7%とほぼ4分の1減となりました。県別に見ると、石川県が59..3%、三重県が62.6%、東京都が66.9%、愛媛県が67.4%と30%以上の減販です。全体的には減販の平均値前後に集まっています。
一方、最盛時の半分になってなお漸落傾向を続けてきた灯油ですが、大幅に増伸しました。
平均112.5%で、青森県は190.1%とほぼ倍増、秋田県、香川県、北海道、新潟県など7道府県が150%前後の伸びです。新潟県のCOC会員が“配送で忙しい!”と絶叫していただけのことはあります。寒冷地を中心に「引き籠り特需」に恵まれたと言えます。
6月以降は通常に近い状況に戻りつつあると思いますが、3月から5月は業界が初めて経験するマーケット環境にありました。
1つは、ガソリンが確実に大規模に減販するという確実な見通しにあったこと。ために利益確保が絶対明大となったことです。2つめは、外出自粛が灯油需要を喚起したことです。石油危機や災害の需給ひっ迫で燃料油利益が膨らむことはあっても、減販と卸価格暴落と市況下落要件が重なった中での利益確保は初でしょう。
ただ懸念するのは、SS粗利に占めるガソリン依存度が高まったことです。元売直営や広域量販店ならともかく、「ふつうのSS」は他力本願の市況商品に依存するのは危険です。市場はほんらいの姿に戻りつつありますが、7―8月の行楽需要は明らかに落ち込むでしょう。
カーケアにも変調が起きています。カーショップ大手のオートバックSの月次実績を見ると、既存店売上げ前年比は、4月、5月が大幅減で6月は▲1.0%と回復基調は見えます。商品群で、タイヤは4,5月の▲26%、▲11%が6月に+8.3%と大きく戻しています。バッテリーは4月以降も前年を超えています。車検・整備などサービスは4,5月に落ちましたが、6月は+1..7%です。
カーエレクトロニクス、アクセサリー、車販は回復基調ながら6月も前年割れです。
つまり、必需品は回復したが不要不急なカテゴリーは不調ということです。
SSの場合、安定収益源となっていたSSレンタカーにブレーキが掛かっています。車販もバックスと似た状況と思われます。
ただし、これはあくまで全般的な状況であって、企業間に温度差があります。消防法の運用緩和を捉えて店頭に現車展示して車販を伸ばすSSもあります。また、車内抗菌や空気洗浄関連の商品が注目されています。リース会社の新対応を利用して中古車リースを始めたSSもあります。
トヨタグループの調査で、コロナ後に「安全な場所」として車を買いたい意向が増加しているとありました。withコロナは、カーケアに限らず変調を捉えた商品設計に全精力を傾注すべきと考えます。これを機に“脱市況商品依存”が進めばよいと思います。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局