先週、日本列島に冬将軍が襲来。東北地方では記録的な降雪となり、関越自動車道では上り線は塩沢石打ICを先頭に約15㌔、下り線は湯沢ICを先頭に約16㌔に渡り、最大2100台の車両が3日余りも立ち往生する事態となった。冬将軍おそるべし。
そもそも、なぜこの時期の寒波を“冬将軍”と呼ぶのかというと、シベリヤ寒気団のもたらす風雪によって、19世紀にナポレオンが率いるフランス軍が撃退されたことに由来する。ナポレオン軍はいったんはモスクワを制圧するも、ロシア軍によって補給路を断たれ、飢えと寒さにより撤退を余儀なくされた。この様子をイギリスの新聞記者が、「ナポレオンを打ち負かしたのは、ロシア軍ではなく“冬将軍”であった」と文学的に表現したことから、この呼び名が世界的に定着した。
ナポレオンの敗退から130年後、再びロシア征服をもくろんだのがヒトラー。1941年6月、突如不可侵条約を破り、300万の兵員、4000両の戦車、3000機の航空機をもってロシア大陸に侵攻した。「バルバロッサ作戦」の始まりである。破竹の進撃を続けるドイツ軍の前に立ちふさがったのは、またしても冬将軍。ヒトラーの誇る機甲師団は、泥と雪の中で立ち往生し、反撃に転じたソヴィエト軍に撃退された。こうして冬将軍の猛烈さがますます轟き渡ることになったというわけ。
GS業界は、灯油の販売が一気に伸び、「将軍さま~」と最敬礼したくなるような状況かもしれないが、仕入価格がじわじわ上がってきているので、機を逃さず適正マージンを添加してゆかないと、「いま儲けないで、いつ儲けるのじゃ!たわけ!」と冬将軍様に叱られてしまう。しかし、その一方で、相変わらずの「安売り将軍」が、「いまこそ販売量を伸ばす好機ぞ!値下げするのじゃ~」と市況を蹂躙しており、うんざりさせられる。
だが、今年は冬将軍を遥かに凌ぐ、強大な「コロナ元帥」の出現によって、世界経済は壊滅的な打撃を被った。日本の感染者数も、ここ数日間、ねずみ算式に増えており、今週中に3万人を超えるのは確実だ。「暴れん坊将軍」松平健様も感染したそうな。予想に反し、「GoToトラベル」は全国一律の休止となってしまった。逼迫する医療現場からの要請に、菅首相も「闇将軍」二階幹事長の逆鱗に触れるのを覚悟のうえで、決断せざるを得なかったのだろう。
1942年、体勢を立て直したドイツ軍は再びロシア侵攻を開始する。電撃戦はまたしても成功、後退したソヴィエト軍とこれを追撃するドイツ軍は、ヴォルガ川西岸の要衝、スターリングラードで激突する。第二次世界大戦の転換点となったこの戦いで、ドイツ軍を滅ぼしたのは、やはり冬将軍だった。瓦礫となり戦略的な価値がなくなったにもかかわらず、ヒトラーはこの都市の完全占領にこだわり、それがために30万人の将兵が、ソヴィエト軍に包囲されてしまう。飢えと寒さによってドイツ軍は降伏。これ以降、戦局は完全に逆転した。
「GoTo」キャンペーンを、感染者数の推移を見ながら弾力的に運用していれば、年末年始という最大の書き入れ時に一斉休止するような状況とはならなかっただろう、と専門家は指摘している。あとからなら何とでも言えることなのだが、確かに、エビデンスがどうのこうのとぐずぐずしているうちに、勢いを盛り返したコロナ軍団の猛攻を受け各所で医療崩壊が発生、「勝負の3週間」において大敗北を喫することとなったのは事実だ。
ヒトラーは、東部戦線から早期に撤退し、防衛線を強化すべきとの将軍たちの意見を退け、占領地域の維持・奪還にこだわり続けたため、兵士たちは絶望的な戦闘を強いられることになった。「GoTo」もこの轍を踏んでいるように思える。面子にこだわり撤退を渋っているとさらなる惨事を招くことになるだろう。永田町や霞ヶ関の「将軍」たちはこの先の戦局をどう考えているのだろうか…。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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