静岡県熱海市伊豆山の土石流災害が悲惨なことになっています。
実は私たちにとって他人事ではありません。伊豆山の海岸にホテルがあります。新型コロナで中断されるまで、COCは十数年間使い続けてきました。年3回の集合研修で必ず1、2回は利用させてもらいました。ホテルというよりCOCの研修所のような感覚で、スタッフとも顔見知りの関係です。
連絡したら不幸中の幸いで土石流がぎりぎり南を外れて海に落ちています。休業を余儀なくされていました。
土石流の流れ道は私がよく歩いたところです。早めに熱海駅へ着いて、ぶらぶら40分ほどかけて歩いてホテルへ行っていました。土石流に沿うように谷道を下ってホテルに降りていくコースです。勾配のある坂道に沿って小さな渓流があるのですが角度があるので急流が走っていました。熱海の河川は全体に同じことが言えるのですが。
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今回の事故原因について「盛り土」が話題になっています。私は少し違う視点で見ています。伊豆山に限らず、ここ20年ほど土砂崩れのニュース映像を観て気になることがあります。崩れた山が貧弱なことです。伊豆山で私が下りた坂道の山も雑木林でした。ようは70年、80年生の杉や檜が林立するような整備された山ではないのです。
山は植林すると10年前後の単位で「間伐」を行います。3分の1ほどを伐採します。それで空間を広げることによって、大量の空気が入り込み残った木が強力に吸い込みます。そして我らの「CO2様」が森林にとって大好物です。空間が広いから万遍に太陽光が当たります。そして光エネルギーによって木の中で化学反応が起こり(光合成)、最後に副産物の酸素が吐き出されます。
木が育てば根が縦横に伸びていきます。山というのはスポンジのように雨水を吸収します。禿山はそのまま土砂崩れを起こしますが、整備された山では深く張り巡らされた根が山というスポンジを強力にグリッドします。逆に雑木林は根が浅いのでスポンジの底が崩れてしまいます。
前の東京五輪の頃から外材が増えて、国産材が売れなくなり山の値打ちが下がっています。そのためお金の掛かる間伐のモチベーションが大きく下がっています。東京の都市生活に慣れて自分が山林資産を持つことすら忘れている人も少なくないでしょう。全国に雑木林が増えているでしょうし、その山裾に宅地開発している姿を見るとまだまだ事故が起こると思います。
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長々と書きましたが、私はそんな山林の整備を「脱炭素」の優先課題にすべきと考えます。だって、CO2を吸収して酸素に変換するスグレモノですよ。インフラとして稼働中ですよ。水素、アンモニア、合成燃料といった明後日の話ではないのです。間伐など今すぐ取り掛かれることです。無関心な山主からは没収して国有化すべきです(資産価値は低いですから)。そうなると脱炭素議論の主役は経産省から林野庁に移りそうですが。
その林野庁のHPによると、36~40年生のスギ約15本で1家庭の年間CO2排出量分を蓄積しています。地中に人為的に埋めるよりよほど安上がりです。
それと間伐材です。売れないなら薪にしたらどうでしょうか。識者が大好きな「植物由来」ですから薪を燃やしてもカーボンニュートラルです。EVよりも戦時中の「薪自動車」を引っ張り出したどうですか。
ちょうど現在放映中のNHK朝ドラの物語に一致します。宮城県気仙沼の漁港出身のヒロインが登米の森林組合で働きます。整備された山の養分を含んだ水が海に流れて豊かな海産資源を育てるという、自然循環の大切さがドラマの背景にあります。
業界関係者は脱炭素化議論でEVを否定するよりも隠し玉の「薪自動車」をぶっつけてみたらどうでしょうか。EVに充電するよりも薪売る商売の方がはるかに健康的です。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局