石油連盟の統計に2020年暦年の国内販売実績が出ています。
20年間の時系列で見ると、改めて石油市場がいかに縮小したかが分かります。
①燃料油=2002年比で▲37.3%
②ガソリン=ピーク05年比▲24.8%
③灯油=▲51.8%
軽油はバブル崩壊時に激減しましたが、その後公共事業の復活もあって堅調に推移して、02年比で▲2.1%にとどまっています。それでも燃料油全体が4割近く縮小している事実に、なるほど元売も販売業界も再編されるはずと感じる次第です。
異なった視点で見れば、日本は20年間で化石燃料から排出するCO2を4割近く削減してしまったと言えます。もはや石油業界にCO2削減義務はありませんね。
燃料油の2002年を100とした増減費を(グラフ)にしました。02年比で90%、80%、70%と台割れした時期は原油高の時です。
やはり市況商品だけあって高いと売れないですね。
話は変わりますが、先週の日本経済新聞に大手企業の新卒採用計画がまとめられていました。
・大卒採用計画は2割増と高い伸び
・コロナ後にらむ求人活発、構造的人手不足が改めて顕在化
・初任給額の伸びも最高
若い世代にとって実に良い話です。その中にあって初任給で断然トップを走るのが石油元売3社でした。22年度通期の純利益見通しが3社合計で4300億円ですから、上記の日経記事通り「コロナ後にらむ求人」なのでしょう。
この元売3社に並ぶ高給企業があります。「信越化学」という会社です。石油化学の世界は、ナフサを熱分解する「エチレンセンター」と呼ばれる11社の企業群があります。石油では精製元売に相当します。元売も自社プラントでナフサ分解を行っています。石油の場合は製油所で完成品が作られて、そこから先は流通だけです。ガソリンや軽油を灯油で薄めるなど途中で製品を加工すれば犯罪者となります。
一方、石化ではエチレンなどは原材料であって、川下企業が独自に化学変化を行いながら製品を企画・設計しています。信越化学はその中流に位置しています。
22年第3四半期の売上高は2兆1600億円です。ENEOSの11兆1100億円、出光の7兆2000億円に及ばず、コスモと同規模です。
しかし、この会社が凄いのは「稼ぐ力」にあります。メーカーでありながら営業利益率は37.4%です。方や元売3社は、ENEOS2.2%、出光4.1%、コスモ7.3%です。
石化に詳しいわけではありませんが、エチレンセンターでないゆえに、エチレンやパラキシレンなど原料品=市況商品に依存していないことが強みにあります。
創業100年近い会社ですが、戦後、エチレンに着目して深堀しながら派生商品を開発してきました。半導体シリコン、塩ビ・化成品、シリコン、機能性化学品を事業領域としますが、世界シェアトップの製品がいくつもあります。
海外での販売が75%のグローバル企業として、世界の投資家から評価されます。ウェブサイトで調べたら、3月23日時点で時価評価額は8兆2700億円で日本企業では第10位です。
ENEOS1兆4000億円、出光8700億円、コスモ3400億円を凌駕します。
嫌がらせのように見えますが、この違いは「独自製品・技術」の差であることは言うまでもありません。市況商品の石油や石化原料品に売り上げの8割以上を依存し、在庫評価益を除くとほとんど利益が出ていません。SSに関連する新規事業を見ても、誰かが既にやっているものばかりです。
いつになったら市況産業から脱却できるのでしょうか。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局