3月末までNHKで「舞いあがれ!」という朝ドラが放映されていました。旅客機パイロット試験に合格したヒロインが、父親の急死で東大阪の町工場の経営に入り、航空機部品を作りたいという亡父の意思を引き継ぐ物語です。最終話では、完成した「空飛ぶ自動車」を五島列島に飛ばしました。
五島をドラマのもう1つの場所に設定したのは空飛ぶ自動車の伏線もあります。
「自動運転ラボ」というサイトにこう書かれています。「定期船などの往来が少なく、比較的本島と近距離に位置する離島への交通手段としての需要もありそうだ。タクシー感覚で少人数の渡航ができるため、地域住民や観光客などの日常の足として活用できる」
離島や山間へき地では、ドクターヘリのように社会的価値の高い移動体と期待されます。また、大阪府の吉村知事は2025年の大阪万博で空飛ぶ車を実働させると表明しています。様々な企業グループ・研究機関が開発に取り組んでおり、2021年にSkyDriveという会社が国交省の型式認定を取得しています。
国交省も実現へのロードマップを示していますが、管制、安全、航路、離着陸等々法的な定義と担保の壁が存在します。
朝ドラでは試験飛行の時代設定が2028年でした。
一方、海外では2021年時点でスロバキアの企業が離着陸を無事に140回以上こなし、空港間の飛行まで実現しています。
朝ドラ最終回の日本経済新聞朝刊に「新東名に自動運転レーン」というスクープが出ました。国交省は2024年中にも、新東名高速道路区間の駿河湾沼津(東端)と豊田東(西端)の100kmで物流車両の自動運転を認めるというものです。
4月1日施行の改正道路運行車両法で「レベル4」が解禁されました。
決められた区間内は、システムで走行するので運転者はハンドルを握る必要はありません。国交省は2018年に同じ新東名で5台のトラックで実験しています。
先導車両の運転者のみハンドル走行し、残る4台は手放し走行です。時速80kmで車間距離も一定に保たれたまま、5台が走り切っています。
物流業界には「2024年問題」があります。2019年の働き方改革で、物流業界は時間外労働の規定を5年間猶予されてきました。しかし24年からは「年間960時間まで」のリミッターが掛かってきます。年間200時間以上の短縮となり、深刻なドライバー不足が懸念されています。
また、ドライバーの絶対数不足と高齢化は10年ほど前から懸案事項であり、国交省は「ホワイト物流」を推進して労働環境の改善を荷主も巻き込んで展開しています。
国交省のHPによると、「トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化」と「女性や60代の運転者等も働きやすい、より『ホワイト』な労働環境の実現」を目的に掲げています。
物流基地での無駄な荷待ち、手作業の積載荷下ろし、夜間早朝の積載…等、ドライバーの負担と労働時間を増やす商慣習を改めて、荷主も巻き込んで出荷元や納品先での物流業務効率化を推進するものです。
乗用車の世界でも、国土交通省が福井県永平寺町で展開中の自動運転移動サービスに関する実証実験車両を「レベル4」に引き上げています。
新東名でも永平寺でもレベル4で走れば、必ず波及効果(問題点も含めて)が表れるでしょう。自動車産業において、EVはもちろん空飛ぶ車と自動運転技術の開発競争が加速します。
朝ドラにあるように空飛ぶ車は過疎地・離島にとって画期的な移動手段となります。資源エネルギー庁ではなく国交省が過疎地対策に実効的な担い手となりそうです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局