COCと独立経営<847>「杉山大志さんの講演」 – 関 匤

COCの通常総会と研修会が終わりました。
理事が2人交代して、実務能力の高い若手と中堅が担います。SSと石油流通の新しい形作りにご支援いただきます。
研修会では、今回もキヤノングローバル戦略研究所の杉山太志研究主幹をお呼びしました。

「脱炭素」というとグレタ・トゥーンベリに象徴される主義や思想、日本のキーテレビ局や大手新聞のような「欧米の偉い人たちが言うのだから地球は温暖化している」という権威主義的な話が横行してきました。コロナ禍の初期に、罹患しただけで非国民扱いで報道されたように、脱炭素に異議を唱えることはもちろん、炭化水素に関わる企業を糾弾するかのごとき論調も見られました。

最近ようやく地に足の着いた意見が出てくるようになりました。杉山氏は物理学者であり原理原則でエネルギーを語る方です。TVキー局のコメンテーターのように主義や思想、空気で語りません。

「裕福な国に住む10億人は、世界の他の60億人に比べて一人当たり5倍以上のエネルギーを使用。裕福な国では、国民百人当たり80台の車が走っているが、他の地域では100人当たり数台しかない。世界人口の80%以上がまだ一度も飛行機に乗っていない」

つまり、今後成長が予想される世界人口の80%が裕福に向かえばエネルギー需要はひたすら拡大する。そのボリュームを再生エネルギーではとうてい担保できない。自然界に存在し原理原則で巨大なカロリー、安定供給量、価格が担保される石油、ガス、石炭、原発なしに、後発国の幸せはないということです。

また、再生エネルギーは「加工」のひと手間が入るため、そこに「金属」というキーワードが絡んできます。銅、ニッケル、レアメタル、コバルト、リチウム…全てにおいて中国が「脱炭素のOPEC」となります。日本の安全保障どころか世界平和にとっても大変なリスクが出来します。

また、杉山さんは根拠となるデータのとり方にも疑義を唱えます。学者やコメンテーター(専門家ではない)は、自説を強調するためにデータの切り取りを行います。最近10年の気象条件を見て「温暖化している」という風に。最近とみにこういう言説を平気で主張する人が増えています。

何か自然災害があれば、必ず「地球温暖化による」という枕詞が入ります。NHKも平気で言っています。最近カナダの山火事で米国東海岸の大気汚染が広がっています。さっそく「原因は異常気象か」(テレビ朝日ニュース)と地球温暖化を匂わせる報道が出ています。

しかし、グラフは杉山さんが提示した米国政府による山火事被害面積の公式データですが、左端の1930年~1950年代にかけてもの凄い焼失面積となっています。50年、100年単位で見ると、「温暖化」だけでは結論付けられないメディアにとっての“不都合な真実”があります。

米国の山火事被害は1930年代が現代の5倍以上あった ※杉山氏の資料。 米政府のデータ   山火事による焼失面積1930年-2017年
米国の山火事被害は1930年代が現代の5倍以上あった
※杉山氏の資料。 米政府のデータ  
山火事による焼失面積1930年-2017年

杉山さんは所属企業について、「キヤノンが投資するシンクタンクだが、キヤノンのためではなく国のために研究せよと言われている」と言います。それがキヤノンにとって不都合な結論であっても一切忖度なしに研究させてくれるそうです。

研究者としては、キー局や大手新聞で論を述べる場が与えられず書籍やYouTubeそしてCOCのような(斜に構えた?)団体での講演に限定されるのが実情です。
日本は資源がない国だけに、主義・思想・空気に左右されない原理原則のエネルギー論が待望されます。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206