私の家の近くに「イオン」八事(やごと)店がある。でもって、その中にあるパン屋で「八事」という名前のアンパンが売られている。よもぎを練りこんだもちもちパンの中に、クルミの混じったつぶあんが詰まっている。これがなかなかうまい。この「八事」をおやつで食する時、私は毎回、コーヒーでいただくか、緑茶でいただくか迷う。パンだからコーヒーか、いや、よもぎやあんこが入っているから和菓子として緑茶で…。
結局、その日の気分で選ぶのだが、こんなばかみたいな話を持ち出したのは、先日、小学校の「道徳」の教科書検定で、文科省から「学習指導要領の示す内容に照らして、扱いが不適切」として、『にちようびのさんぽみち』という教材で登場する「パン屋」を「和菓子屋」に改めたという報道を見たから。文科省は、「パン屋がダメというわけではなく、教科書全体で指導要領にある『我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着をもつ』という点が足りないためと説明している。同様の理由で、『大すき、わたしたちの町』と題して町を探検する教材では、アスレチックの遊具で遊ぶ公園が、和楽器を売る店(?)に差し替えられた。
この判断基準に沿えば、私は「八事」を食べる時、日本人らしく緑茶をすするのがふさわしいということなのだろうか。(苦笑)ちなみに、日本の伝統文化を象徴する都市と言えば、多くの人が「京都」と答えると思うが、その京都府、2014年に総務省が行なった調査によれば、1世帯あたりのパンの消費量が何と全国一。ちなみにバターとミルクの消費量も京都が全国一。「ここがヘンだよ日本人」と言われそうな話ではないか─。
GS業界でも、系列店に属さない独立系GSを“GS業界の伝統”を破壊する輩のように見下す風潮が依然としてあるように思う。いまや独立系GSは、パン屋と同様、消費者からは完全に受け入れられ、支持されている。にもかわらず、いや、それゆえに、GS業界のお偉方は独立系GSを目の敵にしているように思う。経産省から、事後調整という悪しき伝統をやめるよう指導されている元売は、「独立系の連中が酷い安売りをしているから調整せざるを得ない」みたいなことを言って、責任添加している。確かにそういう業者もいるにはいるが、大半の独立系GSは、採算というものを常に念頭に置きながら、厳しい環境下で生き抜いているのだ。
元売が次々と統合され、多様性が失われつつあるGS業界で、画一的な基準に弾き飛ばされたGSが独立系の道を選択するケースは、今後さらに増えてゆくのではないだろうか。パン屋が「よもぎパン」を売り、和菓子屋が「いちご大福」を売るように、伝統にとらわれず、独自のアイディアで活路を切り拓いてゆくべきであり、それがGS業界の未来を明るいものにしてゆくと信じている。
多様性を尊ぶ一方で、守るべき文化があるのも確か。私は、野球の国際大会で導入されている、延長11回からは無死一二塁から始めるという「タイブレーク方式」には断固反対。時間短縮のためのルールだが、野球の持つドラマチックな要素を破壊する実に愚かな制度だ。日本の高校野球でも導入が検討されているらしいが、1979年の箕島・星陵の一戦を観たことのない連中が言っているのだろう。また、故意敬遠を申告するだけで、投手が投げなくてもよいとのルール改正がなされるとのことだ。冗談じゃない!かつて長嶋が敬遠球を打ってランニングホームランにしたことを忘れたのか? 金田が敬遠球を暴投してサヨナラ負けを喫したことを知っているか? 野球から“ドラマ”を奪わないでほしい。
ドラマといえば、昨日(26日)の稀勢ノ里!立会いでビンタを張ったり、肘でかち上げたりした挙句、寄り切ったあとにダメを押すといった品性の無い横綱に辟易していた観客の溜飲を見事に下げてくれた。大相撲の美しい伝統を、まさに土俵際で守ってくれたと思う。ちなみに、稀勢の里の好物は、地元茨城・牛久市の中華料理店の「エビチリ」だそうだ。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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