vol.658『お金のトラブル?』

すでに何度も書いたとおり、私の経営している「セルフスタンド日進東」は、券売機で購入したプリペイドカードを使用して給油するシステムだが、三百円以上三千円以内の小額給油であれば、紙幣または硬貨を直接投入しても給油できる。ところが最近、外接機の硬貨を回収すると、青緑色の“何か”が付着した百円玉や五十円玉が多数見つかるということが続いていた。

カビやコケのような天然のものではなく、人工の物質のようなのだが、水で洗っても、油で拭いても完全には取れない。少しネバネバしていて、無臭。「何なんだろうね~」とスタッフと気味悪がっていたが、5枚や10枚ならともかく、一日に50枚ぐらい入っているので、コイン循環器の故障を引き起こす恐れがある。一日も早く“犯人”を見つけて、やめるよう注意しなければならない。

で、何日かしたら、ミニバンタイプのディーゼル車で来店した年配男性が、硬貨を何枚も立て続けに入れているので、スタッフが近づき、手に中にある硬貨を見せてほしいと声をかけた。男性は手を後ろに組んで隠そうとしたので、この人だと確信したスタッフが少しきつい口調で質すと、「すみません、もう二度とやりません」とすんなり謝罪したため、それでよしとした。これが“汚れていようが金は金じゃねぇか”などと開き直るような御仁であれば、ひと悶着するところだったが…。

一体、あの付着物はなんだったのか、なぜあれほど大量に持っていたのかなど、幾つか聞きたいこともあったが、詮無いことなので聞かずじまい。その後“これこれの車に乗ったおじいさん”ということでスタッフ全員に周知させ、気をつけさせていたが、いまのところ新たな被害は起きていない。

硬貨にせよ紙幣にせよ、皮脂や粉塵などが付着しており、それが紙幣ユニットやコインメックなどの電装品にダメージを与えるので、定期的な清掃は必須である。時々、券売機で購入したプリカを口でくわえて給油レーンに戻ってゆくお客さんを見かけるが(圧倒的にオヤジ)、やめてもらいたい。カードリーダーのセンサーやローラーの汚れの元になるので。これから夏になると、汗を吸ってしなしなになった紙幣を突っ込もうとするお客さんもいるが、これもやめてほしい。文字通り“汗水たらして稼いだお金”かもしれないが、しばしば紙幣詰まりを起こすやっかいな代物なのだ。

現金決済のリスクを回避するためには、急速に普及している電子マネーへの切り替えを進めるべきだが、これを普及させるためには、ただでさえ薄い利幅の上に、単価値引きやポイントサービスという負担がかかる。しかし、何よりも怖いのは、先日全世界を震撼させた「ワナクライ」のようなコンピューターウィルスによって、オンライン・システムが停止してしまうことだ。事実、今回のサイバーテロによって、中国国営石油会社のGS約2万店で一時決済ができなくなってしまった。

最近では、細工した小型パソコンを持って満員の地下鉄に乗り込み、近くにいる人が携帯している電子マネーの“中身”を吸い取るという「電脳型スリ」がいるとのこと。以前、GSの外接POSにクレジットカードのスキマーを取り付けて、カード情報を盗んでいたという事件があったが、これからは、クレジットカードよりもセキュリティが各段に低い電子マネーを狙った“仕掛け”がGSやコンビニで横行するのではないかと危惧されている。先日業界をにぎわした、セルフコンソールの許可ボタンをトントンしていた小箱よりもよっぽど危険な犯罪だ。

目に見えるお金によるトラブルは困るが、目に見えないお金のトラブルはもっと困る。電脳社会に暮らすわたしたちは、とても危険な環境の中でお金をやり取りしているということを自覚しなければならない。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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