COCと独立経営<929>補助金ゼロ週と適切な競争 – 関 匤

「経済産業省はガソリン価格抑制の補助金について、17~23日の支給額を「ゼロ円」とすると発表した。…支給額がゼロになるのは22年1月に制度を始めてから初めて」(朝日新聞要旨)

一次的かもしれませんが、米WTIが2月の71.33ドルから3月は67.82ドル、直近の4月14日は61.99ドルまで下げています。直近は2月比13%の値下がりです。
また為替円ドルレートが2月の152円が、直近で142円の円高です。単純計算ですがこの変動率で原油CIF価格を推定すると2月の「86円」が、直近で「63円」まで下がっている計算です。そこで17日からの1週間は補助金不要と相成りました。

ただでさえ国際情勢が不安定なところにトランプ関税という大きな変数が出現したので、何がどう推移するか私ごときには分かりません。ただし、ガソリン補助金に関して、日本経済新聞は政府・政策当局内の温度差を報じています。

「制度を運用するエネ庁幹部は『補助金制度は恒久的なものではなく、ずっと出口を探ってきた。支給ゼロは一つの節目だ』と捉える。エネ庁はバイオ燃料の導入支援など脱炭素政策に力を入れている。ガソリン価格の補助は従来燃料の延命につながるため、庁内では早期の撤廃を求める声が目立つ。…ただ夏の参院選を前に、補助金での引き下げを提案する自公に対し、国民民主はガソリン税の旧暫定税率の廃止を求めており…出口が見えつつあった補助金制度の再考には課題も多い」

私は前回、食品支出とガソリン支出を比べてみました。食品の一部である「生鮮三品」だけでガソリン支出を「12.6倍」も上回っています。
政策とは「最大多数の最大幸福」です。免許取得者数が人口比66%です。日本人の3分の1がガソリン補助金の直接的恩恵を受けられません。一方、食品は全人口に直接関わります。
これも何度も述べますが、ガソリン補助金の前提となる小売価格の捉え方が、会計検査院から指摘されたように非常にあいまいです。資源エネ庁の市況とgogo.gsサイトの間に5円前後も差異が生じます。こんな前提で補助金を支給したのですから、相当に税金の無駄遣いとなった筈です。


とまあ22年1月以降、補助金のあいまいさが追い風となったのか、販売業界はガソリンで利益を上げられる状況が続いてきました。
結果、系列の重点SSなどはカードやLINE値引きを駆使して、「週末8円引き」とか「景品販促」を行い、系列内で顧客移動を引き起こしています。
自由化から30年、SSは小売業態として転換すべきだったと思いますが、すっかり「ガソリンスタンド」や「給油所」になってしまったようです。

ぜんせき新聞によると、公取委は4月11日、石油販売業界向けに独禁法説明会を開催しています。
「ガソリンの不当廉売」がテーマだったようですが、長野県の問題もあってか公取委の松本課長は「カルテル」の説明も行っています。公取委としては、販売業界に「李下に冠を正さず」を一番言いたかったと思います。

ただし記事を読むと、販売業界は不当廉売絡みの質問ばかりです。私はSS業界に関わって40年以上になりますが、この業界は今も昔も市況話に終始しています。ある有為な経営者が「この業界、ずっと同じ話ばかりしているよ」と呆れていた姿を思い出します。
記事中で公取委は「独禁法は適切な競争を促す法律。公取委としてできることとできないことがある」と明言しています。廉売の告発よりも「競争」が公取委の本音でしょう。

仕切りの話はしても、市況の話をしないCOCにいると違和感ばかり覚えます。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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