COCと独立経営<930>星野リゾート丸投げで過疎化解消を – 関 匤

米国にNACSというコンビニエンスストア(CVS)の協会があります。
ここのデータにCVS店舗数の推移が出ていました。米国ではCVSの80%がガソリンを販売しています。従ってCVS数イコールSSでもあります。

「コロナ禍の質的向上で米国のCVS数は再度増伸」 ※出所:NACSデータより作成
「コロナ禍の質的向上で米国のCVS数は再度増伸」
※出所:NACSデータより作成

2013年からの推移を見ると、増加基調で動きながら19年~22年に減少に転じています。そして23年以降、再び増加基調となっています。
減少した時期は、明らかにコロナ禍の影響です。ホームステイが常態化して客数が激減したことによります。CVSのウェブマガジンのCSPには、この時期に伝統的なCVSチェーンや中小規模店の売却や撤退が盛んに報じられていました。

逆に大手チェーンは、アプリによるテイクアウトやケータリングと並行して、店内調理飲食のレベルアップを図りました。結局、コロナ禍は米国CVSを換骨奪胎したと言えます。つまり、コロナ禍は米国CVS=SSの優劣を篩(ふるい)にかける過渡期となったのです。これが一時的な店舗数の減少を生みました。
そしてコロナが明けると、業態・サービスを革新した大手チェーンが新設やM&Aによって拡張戦略に動いたことで、再度店舗数が増伸に転じています。

この文脈上にカナダ大手クシュタールによるセブン&アイへの買収提案があります。


日本のように少子化・高齢化が問題視されない米国市場を論じても意味がないと言われそうです。

しかし、日米両国でポイントになるのは米国であれば「CVSの質的向上」であり、日本であれば「油外収益・付帯設備の質的向上」が店舗維持のキモであることです。
それゆえ、SS過疎地を問題視する人たちが「ガソリン給油の維持」を最重要論点としていることに、違和感を通り越して滑稽さを感じてしまいます。

どんな秘境でも“コンテンツ”があれば人が集まります。その結果として給油場所が消費者ニーズの1つとして生まれます。

前にも書きましたが、群馬県の川場村はSS2カ所で「関東地方におけるSS過疎地」なる資料に名を連ねています。
人口は2020年で3480人。2005年の4179人をピークに減少し続けています。しかし過疎地を逆手に取って1998年に東京ドーム1.5個分の「道の駅川場田園プラザ」を開業。村が60%出資した事業会社が運営にあたり、年々ブラッシュアップを重ねた結果、人口3000人の村に年間200万人の来訪者があります。

地場人口と合わせて1日当たりに置き換えると、川場村の実態は「人口1万人」となります。田園プラザに隣接するJA群馬川場セルフSSは、さぞや賑わっていることでしょう。でも、霞が関や業態団体はそれを「SS過疎地」として“問題視”しています。

同じ群馬でSS1カ所の“過疎地”があります。邑楽郡明和町です。人口は川場村の3倍で1万人を超えます。しかし、2021年3月末時点で「SS数ゼロ」でした。私のような愚人と違って“心ある業界重鎮方”はさぞや心を痛めていたことでしょう。
しかし翌年、待望のSSが新設オープンしました。「コストコ」です。過疎化解消に万歳三唱したことでしょう。もうコストコの悪口言えないですね。


過疎化解消の万能薬は「お客が集まること」です。川場村は田園プラザ、明和町は「コストコ倉庫店」がその大任を担っています。
ガソリン給油だけを論じても過疎地に来店客はありません。油漬けの頭で論じても、「給油所」の話に終始します。いっそのこと、予算を「星野リゾート」に丸投げしたら? 人が集まってSSが必要になるでしょう。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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