自民党総裁選で高市早苗氏が新総裁に選出されました。野党が連合を仕掛けるかどうかですが、首班指名の可能性は高くなっています。
「ガソリンと軽油の価格を引き下げたい」。高市氏は4日の総裁就任会見で、野党が主張するガソリン税の旧暫定税率の廃止を秋の臨時国会で実現する考えを示した。実際の減税までの間は補助金によって価格を下げるとも訴えた。(日本経済新聞)
高市氏が首班指名されれば、暫定税率廃止は野党が主唱してきたことであり、財源問題で議論が沸くでしょうが、実行されることになるでしょう。
額面通りならば、ガソリンは25.1円、軽油は17.1円の暫定分が卸し・小売価格から下がることになります。計算してみます。
① 1SS当たり月間平均ガソリン販売量=129
※令和6年度の石連統計販売量を資源エネ庁統計SS数で算出
② gogo.gsサイトの10月9日平均小売価格=172円
●現状税制の場合月商=2219万円
●暫定廃止の場合月商=1895万円
●差異=月324万円、年間3885万円
つまり減税分4000万円近く年商が縮小することになります。保有SS数との掛け算になりますから、企業によって数億から数十億円の売り上げ減となります。
元売レベルになると凄まじい数字になります。たしか国税への納税は90日だったと思いますから、預かり分の「回転差資金」が半減します。キャッシュフローに影響が出ることになります。
15日のCOC研修会でも、この衝撃への覚悟と対応といった話が出ます。
また、何回か前に書きましたが資源エネルギー庁需要想定検討会が2029年までに24年度比でガソリンで11.4%、燃料油10.5%減少の見通しを出しています。
暫定廃止で価格が下がって需要を喚起するかもしれませんが、HVと軽乗用車が保有台数の3分の2を超えてなお増加しています。
今回、COCで編集する会報で試算したのですが、2002年から24年までに乗用車の燃費は「158%」も上がっていました。昔のように価格を下げれば量販効果が得られるという甘い見通しを持たない方がよいでしょう。
また、EVは欧州のエンジン回帰が伝えられますが、来年26年から日本メーカーは本格的に展開するシナリオがあります。国内はともかく、彼らは世界で販売しているので、このままではアジアで売れなくなるという戦略上の危機感です。
むしろ私は「ガソリンで飯は食えない」という認識が高まるほどに、SS業態のあり方を真剣に考える方向性が生まれると考えています。
現実にCOCの中で、「給油客が減っても店舗の客数は減らせない」と考えて、思い切った投資に踏み切る経営者が複数現れています。この規模の会社がよく踏み切ったなと感心するほどです。
米国でコンビニ複合店が当たり前になった契機は、オイルやタイヤなど油外商品収益が飽和状態になって収益軸を模索したことが1つ。もう1つはセブンイレブンがセルフでガソリン安売りを始めたこと、と聞いています。
そしてコンビニ複合が競合する中で、さらなる進化形が登場しています。
日本は自由化して30年を迎えます。暫定廃止やさらなる減販という環境変化が「給油所」や「ガソリンスタンド」から、「サービス業態」への転換を本格化させると見ております。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局