COCと独立経営<950>系列は昭和のマーケティング – 関 匤

10月15日にCOC秋季研修会が終了しました。今回は横浜市桜木町での開催となりました、北海道から九州まで多くの皆様にご参加頂きました。みなとみらい地区を眺望できる素晴らしい会場でした。
講師4人、来賓1人のお話が時宜を得ているうえに面白い視点を数多くご紹介頂き、私の手前味噌でなく参加者の皆様から喜んで頂きました。
小さな会ですから本当に手弁当でやっています。木下理事長以下理事の皆さんが自ら受け付けを行います。ありがたいことです。


今さら述べるまでもなく、米国SSがコンビニに転換したのは「給油+軽整備+洗車」のビジネスモデルが1960年代に飽和状態となり、より高い報酬を求めるスタッフがスピンアウトし、一緒にサービス機能が空中分解したことにあります。
このため米国石油業界は、給油をセルフ化してコンビニを新たな収益軸に業態転換しました。コンビニは流通業です。セルフ+コンビニが集客効果を発揮するにつれて、石油業界内での競争に加えて本チャンの流通業者にガソリンを置く意味を理解させました。

90年代にアジア通貨危機やロシアデフォルトで原油価格が暴落すると、米欧の石油会社は下流の製油所で統廃合を行います。代わって石油化学会社が精製に参入すると、「系列」を持たない彼らは非系列供給を強化します。そこでウォルマート、ターゲット、コストコが急成長しました。
一方、SSをスピンアウトした人たちはSS機能を分解した「カーウォッシュセンター」や「クイックルブ」など専門業態を成長させました。
では日本市場では?


すでに何度も拙稿で述べていますが、SS機能の空中分解は米国とほぼ同時代に始まっています。カーショップやホームセンターなどセルフ店の成長、バブル崩壊後のトヨタなどメーカー系ディーラーの新たなサービス戦略の展開です。

強力な競合業態によってSSの「油外収益」はさん奪されてきました。自動車用品の総合卸売を手がける(株)CAPという会社が、自動車や二輪車を保有する消費者1000人余りに行ったアンケート「オイル交換の店舗は?」で、SSは“10.4%”でしかありません。(グラフ)

出典:自動車用品卸売㈱CAPによる自動車・二輪車保有者へのアンケート
出典:自動車用品卸売㈱CAPによる自動車・二輪車保有者へのアンケート

米国の石油会社は、セルフ化と共に「油外」を捨ててコンビニを戦略展開しました。では日本の元売は、何をどうしてきたのでしょうか?
いまだに彼らの系列プログラムの中心は、オイル、タイヤ、バッテリーです。それを「単品キャンペーン」で販売しています。これは昭和のモータリゼーション期のマーケティングであり、半世紀前にカーショップが登場した時点で賞味期限を露呈しています。

元売は系列SS数×個数で利益確定できますが、キャンペーン目標を与えられたスタッフは、令和の時代に顧客に体当たり攻撃しています。どんどん人が来ない業界にしている一因です。


そして、洗車も空中分解が顕在化しています。「(大和ハウス工業グループの)大和ハウスパーキングが、洗車場を現在の9店舗から2026年度までに30店舗に増やす。投資額は年25億円とこれまでよりも2.5倍にする」(日本経済新聞)

セルフ洗車場の拡大です。ビジネスは昔からありましたが、デジタル化による管理機能、決済機能、洗車機の高機能、余裕のある屋根付きタッチアップなど、サービス機能を持つ専門業態が高い集客力を発揮しています。群馬県では大型施設の「SPLASH’N’GO!」(スプラッシュン・ゴー)が、県内だけで新店舗2店を含む6店舗を展開します。大和ハウスと同じく純水洗車が売りです。

「系列防火壁」から抜け出ない元売系列プログラムは、縮小均衡を続けるようです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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