むかし、原付に乗ったじいさんがくわえタバコをして店に入ってきたので“すみません、タバコは…”と声をかけたら、ニタッと笑って「これはパイポだわ」。見ると、タバコそっくりのを禁煙パイポで、ご丁寧に先端は火が付いているように作りこまれている。(http://www.geocities.jp/minorbussanten/other/03-04.jpg) …ったく、紛らわしいモノくわえてんじゃねぇよ!
最近は電子タバコなるものが普及しおており、このあいだこれをプカプカさせながら給油する客がいたので、スタッフが注意すると“これは火が付いているわけじゃないからいいんじゃないのか”と詰問されたという。実際のところどうなのだろうか。
ネット検索をかけてみたところ、現行法では明確な基準が見当たらず、消防庁において、「(スタンド内での)電子タバコによる喫煙行為が火気に該当するか法的に検討中」とのことだった。しかし、一方で「電子タバコによる喫煙行為を見た者が、スタンド内での喫煙が容認されているものと勘違いし、紙巻きタバコによる喫煙を誘発するおそれがあるので、電子タバコによる喫煙は紙巻きタバコ同様に危険物を取り扱う場所では遠慮願いたい」との見解も示されていた。
まさか、電子タバコをふかしながら給油している客を見て“あ、このスタンドではタバコ吸っていいんだ”と誤解し、紙巻タバコに火を付けるなんてバカがいるだろうかとは思うが、絶対にいないとも言えない。それよりも、燃焼させてはいないが、液体をバッテリーで“加熱”させているわけだから、他の客がそれを見て不安を抱くことはあると思う。公衆マナーの観点からすれば、冒頭で紹介した“タバコそっくりパイポ”ですらNGだろう。
また、海外では電子タバコのバッテリーがポケットのなかで異常加熱して爆発するという事故が多発しているらしい。(https://www.youtube.com/watch?v=AYRTgZcLFhU) 電子タバコに限らず、バッテリーを使用している機器には発火するリスクが潜んでいるのは確か。サムスン電子のスマホ「Galaxy Note7」の電池で発火事故が相次ぎ、2016年8月の発売開始からわずか2ヶ月足らずで製造・販売の中止に追い込まれた事件は記憶に新しい。
日本ではまだ電子タバコの電池爆発事故の報告はほとんどない。だが、東京消防庁は2016年12月に「リチウムイオン電池からの火災にご注意を!」というタイトルでプレスリリースを配信した。それによれば、リチウムイオン電池による火災事故件数は2011年に4件だったが2016年には50件と10倍以上になっている。東京消防庁は今後、電子タバコの利用者が増えていくにつれ、事故の件数も増えることは十分に予想できるとしている。やはりGS内では電子タバコであっても利用は御法度とすべきであろう。
電子タバコは、煙を出さず、臭いも少ない。それゆえか、GSのみならず、喫煙などあり得ない場所で、“電子だから”という考えゆえか、スバスパやる事象が報告されている。例えば、電車の中で吸う人がいるという。注意すると、「害はほとんどないんだから、細かいこと言うな!」と逆ギレされたというツイートも。JR東日本に問い合わせてみたら、喫煙可能スペースを除き電車内や駅構内での電子タバコの使用は禁止。理由を問うと、「常識の範囲で考えて頂ければわかることですので」との返事だったそうな。そりゃそうだわな。
携帯電話にせよ電子タバコにせよ、テクノロジーの進歩によって便利な道具を使うようになったものの、肝心のモラルやマナーは悪くなってゆく一方だ。権利や自由を主張するのはいいけれど、他の人への気遣いを忘れたら、それはもうただのわがまま。そんな輩が増えている。うちのスタンドにも「電子タバコも禁止」という貼り紙をしておくことにしよう。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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