『ヤマト運輸を中核とするヤマトホールディングスが5月1日に発表した2017年度決算は、営業利益が356億円と前期比約11%減の減益予想から一転、約2.3%の増益で着地する結果となった。宅配便の単価上昇が功を奏し、2017年度は昨春以降、人件費などコストの上昇分を運賃に反映させるべく、法人顧客1100社との交渉を展開。約6割とは値上げで妥結した。ヤマトの取扱い荷物の1~2割を占めるとされるアマゾン向け運賃は今年1月に平均で約4割上昇。また、個人向けの基本運賃も2017年10月に平均で約15%引き上げた。2018年度業績の会社計画は、売上高が1兆6000億円(前期比4%増)、営業利益は580億円(前期比62.5%増)とV字回復を見込む』─5月2日付「東洋経済ONLINE」。
取扱量が年々増えてゆく中で、あえてボリュームを減らしたうえで単価を値上げする─。販売量が減少してゆく中でも、価格引下げによる分捕り争いを続けているいまのGS業界には到底できない発想転換だ。GW中も、全国各所で130円台どころか120円台でお売りになっておられる方々が「gogo.gs」の価格ランキング上位にズラリとお並びになっていた。オリコンのヒットチャートじゃあるまいし、何をそんなにムキになって“上位争い”に興じているのか。仕入価格は上昇傾向にあるというのに─。
仮に135円のガソリンをヤマト運輸に倣って15㌫引き上げると155円。現時点の仕入価格なら20円以上のマージンが得られる。もうけ過ぎだろうか。ガソリンを1円でも安く売ることでお客様に喜んでいただくのが“使命”だと唱える方々もいらっしゃる。もっともらしく聞こえるが、価格競争の果てにGSが次々と姿を消しているいまの状況が続けば、迷惑を被るのはお客様だ。運送業界は“我々がいなくなったら困るでしょ?そうならないために応分の負担をお願いします”と、至極当たり前の理屈で値上げに成功した。しかも、お客様をコントロールするまでに至っている。
『引っ越し業界最大手、サカイ引越センターの2018年3月期の売上高と営業利益が、いずれも過去最高になった。同社が1日発表した決算によると、売上高が前年比10.5㌫増の883億円、営業利益が同38.1㌫増の104億円だった。1件あたりの引っ越し単価は10万8591円。リーマン・ショック以降では最高となった。企業の業績改善で長距離の転勤などが増えたこともあるが、値引き合戦が緩和したのも一因だ。19年3月期は、売上高が7㌫増の945億円、営業利益は4.1㌫増の108億円を見込む。引っ越しが年度末に集中するのを避けるため、異動時期をずらす企業が増えていることなどから、従来閑散期とされた5~6月の仕事も増えているという』─5月1日付「朝日新聞」。
“やればできる、やったらできた”のお手本のような話ではないか。勇気を持って単価是正に取り組んだ結果、お客様の理解と協力を引き出すまでに至ったのである。GS業界も“我々が無くなったら困るでしょ?”と堂々と価格是正に取り組んでもいいんじゃないだろうか。まあ、石商がすっかり弱体化したいまの業界では、音頭取りをする者が見当たらないが、まずは広域ディーラーが率先することで、流れができるような気がする。
値上がりすることを喜ぶ客などいない。だが、値上げを躊躇してGSが潰れても、「あのスタンド、いつも安くて助かっていたのに残念だな~」とは言ってくれても、「あの店長の家族大丈夫かな」とか「再就職先を見つけてあげなくちゃ」とはだれも思わない。値上げをするのは勇気がいることだが、客ではなく、家族や従業員の顔を思い浮かべて決断すべきだろう。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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