テレビで『NHKスペシャル「縮小ニッポンの衝撃 労働力激減 そのとき何が」』を観た。(5月20日放映) 日本の少子高齢化による労働力不足については、ずいぶん前から警鐘が鳴らされてきたが、改めてその深刻さを思い知らされるルポルタージュであった。内容を掻い摘んで書くと─。
このまま行けば、約30年後に日本の人口は1億人を切るまでに減少する。そのうち、生産年齢人口と呼ばれる15歳から64歳までの人口はピーク時と比べ3、500万人減少する。その人口ピラミッドの図式は「棺桶型」と呼ばれており、世界に類を見ないかたちなのだという。「棺桶」と言っても、日本のそれとは違って、西洋式のもの。つまり、ドラキュラ映画なんかでおなじみの、上方が大きくて、下方へ行くほど狭まってゆく六角形のやつ。…にしても「棺桶型」ってすごいネーミングですな。
もはや生産年齢人口だけで社会を支えることは不可能というわけで、その担い手として高齢者と外国人が求められている。私の店に、近所の老人ホームの送迎バスが何台か来店するが、やはり運転手は皆高齢者。五~十年後にはバスに乗せてもらう側になりそうな人たちが頑張っている。土木関係と見られるトラックやワンボックスの運転手は、外国人が当たり前。「スミマセ~ン“リョウシュウショウ”クダサ~イ」とカタコトの日本語で呼び出される機会が増えた。ちなみに「領収証」は、中国語で「ションツィー」、ベトナム語で「ベンニャム」、トルコ語で「マッグゥス」、スペイン語で「ルッスィ-ボ」…。
GS業界、とりわけセルフスタンドでは以前からシルバー人材がスタッフ登用されてきたが、最近は確保が難しくなってきていると聞く。また、大手GSチェーンが、ベトナム・ホーチミン市において現地学生向けの就職セミナーを主催するなど、外国人労働者の確保にも余念がないものの、それらの人たちの争奪戦は年々激化しているとのこと。GS業界の人手不足はこれからますます厳しくなってゆく。これまで幾度となく書いてきたことだが、GSはいよいよ無人化に向けた研究を本気で考えるべきだと思う。産官学がその気になって協同すれば、それほど難しいことではないと思うのだが。
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『NHKスペシャル』繋がりでもうひとつ。『ブループラネット「青い砂漠を生き抜く」』(5月6日放映) ご覧になりましたか?最先端の撮影器具を駆使し、4年の歳月を費やして、海洋での生きものの生態を撮影した驚異の映像ドキュメント。「青い砂漠」と呼ばれる大海原は食べ物がほとんどない厳しい環境。天の恵みともいえるマッコウクジラの死骸に群がるサメ。脂肪分が削ぎ獲られた死骸は海底へ。そこでは甲殻類や深海魚が、残った肉や内臓を食べる。骨だけになった死骸をさらにバクテリアが養分として分解、副産物としてリンや硝酸などが海底に蓄積される。やがて海流の大きなうねりがそれらを海面へとまきあげ、無数の植物プランクトンが発生、新たな食物連鎖がはじまる─。
いや~大したものです。海でも陸でも、自然界には無駄になるものは何もない。無駄な物を生み出しているのは、衣服をまとい、靴を履いて二本足で歩いている生きものだけ。弱肉強食なんていうけれど、動物も植物も、哺乳類も爬虫類も、生きとし生けるものはみんな、決して欲張ることなく自然界のルールを守ることによって共存共栄を図ってきた。多様性を認め、協調性を働かせて暮らしている。貪欲さも利己心もない。したがって、格差や貧困もない。人間だけが将来に不安を抱きながら生きている。しかもそれだけ苦労しても、寿命はマッコウクジラと同じ70~80年。ホッキョククジラは200年近く生きるらしい。何とも切ない話ではないか。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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