以前に「SS業界で平均値が意味を失いつつある」と書きました。
例えば、ガソリンの月間平均販売量です。自由化以前は平均値の周辺にまとまったSSの母数が存在していたはずです。セルフ解禁前の1997年度で70㌔㍑でした。当時の量販の定義は200㌔㍑以上で、500㌔㍑を超えると見学者が来るほど珍しい数字でした。
しかし、セルフ化によって上限が1000㌔㍑超、500㌔㍑級が珍しくなく、200㌔㍑だと“売れないSS”という時代になりました。そこで平均120㌔㍑はセルフとフルで給油数量に著しい差異が生じ、フルの零細店は50、60㌔㍑辺りにまとまった母数が存在すると思われます。
だから平均を見ても、SS業界を判断できなくなっているはずです。(もちろん、ガソリン数量がSSの実力のバロメーターではありません)
このことは、SSの経営、業態、サービス機能の多様化を意味します。また元売の場合は、系列政策をどのSS群にフォーカスするかという話になると思います。つまり、「我がSS販売業界」と叫んでも、給油機能という共通項を除けば、実態は経営体ごとに似て非なるものになっているということです。
現実問題、同じセルフでも認証工場を構えて車検や車販を行うところとコンビニ業態とでは、店舗の管理と行動は全く異なります。給油機能は同じでも、前者は商談能力に長けた店長とスタッフが見込み客を発見して商談します。
後者はFC本部の規定に従って、単品管理による商品発注・受入れ、商品レイアウト、クレンリネス、レジ接客…等々、店舗と商品管理で消費者ニーズに対応します。前者は時間をかけてお客をその気にさせるのに対して、後者では入店時にお客は何を買うかを決めています。
だから、一概に「SS業界」と言ってもどこを見るかによって景色が全く異なってきます。とくに自由化後に他業界から参入してきたSSの多くは石油の遺伝子を持っていませんから、“SS業界”という認識すらないかもしれません。
だから、コストコを“石油村の論理”でいくら誹謗中傷しても痛くも痒くもないでしょう。コストコは自らをSSでなく倉庫店と考えていますから。「事業の本籍地」が違うのです。実際に国籍も米国ですが。
実はCOCという小さなコミュニティにおいてさえ、経営者によってガソリン市況や増減販に対する“感応度”に温度差が生じています。まして全国的には、経営者の数だけ異なった方向を向いているでしょう。「SS業界」なる言葉は現実には死語になっているでしょう。
同じ元売マークを掲げていても、一等立地の代表格セルフと40㌔㍑の家族経営サブ店の生き方は全く違います。前者はガソリン量販を義務付けられています。
後者は新規客が来ない代わりに、40㌔㍑の「不動の基礎票」つまり顔の見える客だけでしょう。ガソリン数量へのこだわりが少ない反面、顔が見える関係で車まで売るSSも少なくありません。
役所の常套句に「SSは七割が零細」があります。ガソリンの呪縛を逃れ、商売の道具にガソリンを使う。そんな発想が最大多数の最大幸福になる、と考えています。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局