“いきなりステーキ”というチェーン店がありますが、“いきなり無人セルフ化”がやってきそうです。
トヨタが大々的に発売したミライをはじめとする燃料電池車(FCV)があります。FCVに燃料供給するのが水素ステーション(ST)です。このSTで“いきなり無人化”の方向性が出てきました。
間抜けなことに情報を見逃していたのですが、FCVでとんでもない動きが始まろうとしています。水素ステーション(水素ST)の「無人セルフ化」です。
日本経済新聞がこう報じています。「水素ステーションでは、運営者が遠隔監視する無人型の施設の運用を20年までに始める」(3月10日付)。東京新聞も同じ内容を報じています。ということは、明らかに経産省からの情報リークです。無人化して普及を加速する考えなのでしょう。
◇ ◇
以前も書きましたが、水素の危険性はガソリンの比ではありません。製油所でもっとも危険な存在が水素タンクだそうです。精製分解で白油を増産する重要な基材であり、元売も危険度を認識しているから製油所内で一元管理されてきました。危険だからこそ安全性確保のために、STもFCVも高コストになります。
資源エネ庁資料によると、2018年10月時点でST113カ所に対してFCVは2839台です。2015年に鳴り物入りでミライが登場しましたが、一応、約6倍に増えてこの数字です。1ST当り25台です。ガソリンの世界なら、SSどころかポータブル(PS=可搬式)レベルの客数です。
このお寒い現状のFCVとSTで無人化です。報道通りなら凄いことになります。水素STが「2020年には無人セルフになる」のですから。ならば、水素より安全なSSはその時に抱き合わせで無人化されるという裏のシナリオも推定されます。
資源エネ庁と言っても、STを管轄するのは資源エネ庁資源燃料部石油流通課ではなく「省エネルギー・新エネルギー部新エネルギーシステム課水素・燃料電池戦略室」です。早口言葉になりそうなセクション名です。
片や石油流通課ですが、一昨年から昨年にかけて同じ資源エネ庁の燃料供給インフラ研究会でLPGも含めてSSのあり方が議論されました。この場で、流通系のローソンやイオンから、無人化を視野に入れたかなり具体的な消防法規制緩和の意見が出されています。
その後、具体化された動きはSS過疎地でのローリーから乗用車への直接給油の実証実験が目立つくらいです。石油流通課からは、無人化の無の字も出ていません。全石連は大反対だし、消防当局はガン無視と聞いていました。
ところが同じ経産省でもところ変われば、躊躇なく「無人化」が登場します。政府はFCVを東京五輪時のシンボリックな存在にしたいでしょう。また、福島県に世界最大級の水素製造拠点を構想しており、復興支援の一面もあります。予算も潤沢でしょうから、FCVの実効性よりも普及ありきで動いているようです。
◇ ◇
仮にSSが無人化OKとなると、流通系を始めとする本業の利益軸を持つ人たちが主導権を握ることになりそうです。これはすでに欧州市場の現実になっています。元売は自動販売機のベンダー業者になりそうです。そして販売業者にとってSSの位置付けは大正や昭和初期のように、本業の商店の軒先計量機という原点に戻ることになります。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局