最近の原稿でよくテーマに挙げるのが、PayPayやLINEといった「スマホ決済」です。大きな枠組みでは「キャッシュレス」です。
系列・非系列に関わらず独立系はPOSを独自に運用しています。元売オンラインPOS導入SSが拘束力の強いFC(フランチャイズ)とすれば、独立系は自由度の高いVC(ボランタリーチェーン)の違いがあります。
自由化でセルフ解禁から暫くは、独立系がセルフ化を先行したこともあって、ローコストな独自POSが効果的でした。決済を現金のみ、あるいはプリカのみに限定して顧客管理機能も省略したタイプです。時代背景としてバブル崩壊後のデフレ続きで、安いガソリンが買えるならば決済手段が限定的でも、ガソリン集客効果は高かったのです。
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しかし、セルフが当たり前のようになると、立地・設備に優れて、決済フルスペックの元売直営を中心とした系列有力店が競争優位を確立します。
自由化から20年余り、Windowsは95から10に、月に数万円もかかったネット接続は数百円のプロバイダー料で無料のGoogleが使い放題です。1kg近い重量で電話機能だけだった携帯電話は、はるかに軽量で動画編集にSNSとパソコン機能が乗り移りました。通信速度はダイヤル回線の1Gが5Gに進化しました。
IT技術革新と通信速度の急速な革新が決済を大きく変えてしまいました。系列POSではクレジットカード、ICの共通ポイントカード、電子プリカ、SUICAなど交通系カードも網羅した電子決済はカードとスマホ両方が利用できます。
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SSでは現金とクレジットが主流ですが、一般小売では電子決済が増えています。系列POSは可能な限り決済機能を受け入れることで市場に大きく網を張っています。ポイントという“オマケ”付きです。さらにはバーコードやQRコードによる値引き機能まであります。
7、8年前から、セルフ主導のSS市場競争は、ガソリン価格よりも決済機能ではないかと考えるようになりました。そして独立系の決済機能の脆弱性を危惧しました。ネックとなったのが、クレジット手数料です。実は少なからぬSSがPOS機能を持ちながら、余り力を入れていません。薄利のガソリンだけで考えると、系列の倍以上の手数料は重くなります。まして今の時代にPOS新規投資には二の足を踏みます。
しかし、石油連盟アンケートを時系列に眺めると、SS決済におけるクレジットカード比率は10年で36%が44%に拡大しています。単純に言えば、決済機能のないSSは44%のお客を機会損失していることになります。
ジレンマを感じていたところ、一昨年あたりから政府がインバウンドのキャッシュレス対応不備に焦りだしました。非現金が加速するのは確実なので、COCでも研修会のテーマに掲げて継続的に各種決済の導入を議論してきました。また、流通系の非接触決済の企業も訪ねて可能性を探っています。
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その1つのとっかかりがスマホ決済です。前回述べたように、加盟金、手数料無料と垣根がありません。そして現金オンリーSSであっても、クレジットと紐づけられた決済客が来ます。ティッシュを配らなくても無償のぼり3本の告知だけです。運営会社同士が派手にキャッシュバック競争で認知度を高めてくれています。系列の重厚な要塞型POSには敵いませんが、独立系の自由度を生かしてSS業界の枠組みにとらわれずにできるものから着手する。それが中小企業です。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局