8月7日の日本経済新聞にこんな記事が掲載されました。(要約)
「東京都とオリックス自動車は2020年1月から、燃料電池車(FCV)のカーシェアリングを始める。FCVは環境性能に優れるが、高価格もあり普及していない。都が運営費を一部負担し、ガソリン車より安く借りられるようにする。都は東京五輪・パラリンピックに向けて環境への配慮をアピールする。」
FCVがらみの記事はトヨタミライ発売以来、日経が大きく扱うのでどうしても気になります。以前に書いたように、貴重な化学基材である水素を燃やすだけの車に社会的価値があるのか疑問に思っています。しかし、報道されると既成事実化されてしまうので気になります。
そこで、水素ステーション(HS)を調べてみました。トヨタのミライ特設サイトがあり一覧が掲載されています。8月7日現在、全国で104カ所ありました。
ところが但し書きのあるHSが目立つのです。但し書きとは「休止中」とか「要問い合わせ」とあるのです。なんと104カ所中、休止中が46カ所、要問合せが6カ所もありました。あれほど日経新聞が鐘太鼓を鳴らして喧伝しているFCVですが、供給拠点の半数が稼働していないのです。
どうしたのかと某シンクタンクに聞いてみたら、補助金の初期計画が終了して営業するとお金がかかるから「休止」。要問合せは移動ステーションのためということでした。
なんともふざけた話です。経産省はよくも補助金を続けているものです。平成31年度「燃料電池自動車新規需要創出活動補助事業」でHSに2000万円以上の補助金が用意されています。補助期間が終わるたびにドブに捨てているようなものです。もはやパロディではないかと思ったのは、愛知県豊田市のトヨタエコタウン内のステーションが「休止中」でした。
そもそも論ですが、大きな補助金前提でないと普及しない施設に意味はあるのでしょうか。
もっと小さな補助金で設置されるEVの給電設備は約30000万カ所でSS数に並んでいます。コンビニなどロードサイド小売業、時間貸しパーキング、SSも含めれば短期間に10万カ所も可能でしょう。そうなればEVの弱点である航続距離も給電インフラでカバーできます。
自動車専門誌カートップにFCVが普及しない理由として、HSは高コストに加えて水素を逃がす構造のためHSの上階利用ができないために不動産価値に見合わない。ミライの容量70MPa(メガパスカル)タンクに充填すると電力量が大きく環境負荷を高めてしまう。容量を下げれば航続距離が低下してEVの優位性が高くなる…等とありました。
未成熟な技術インフラのまま拙速に動いてしまったのがFCVではないかと考えてしまいます。
次世代自動車振興センターによるとFCVは2017年で2400台登録されています。全国で50カ所しか稼働していないHS。60kmに1カ所です。充填のために120kmを往復している計算です。燃費の20%を消耗する「HS過疎化」ぶりです。補助金切れで休止するHSばかりでは、充填できない“放置FCV”が社会問題化するかもしれません。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局