石油情報センターがセルフSS数の調査を行っています。
注目しているのが、セルフ参入数と撤退数です。1998年のセルフ解禁からトータルで見ると、参入10SSに対して撤退1.5SSの割合です。しかし直近5年で見ると、参入10SSに対して撤退3SSです。野球なら1割打者が3割打者になるほどに撤退率が上がっています。
エクセルで参入SS数を折れ線グラフ化すると、2003年から2010年に突出した山が出来て、以降はドスンとベースがダウンして直近は解禁当時並みになっています。参入と撤退をグラフ化すると、直近では2017年下半期に参入11、撤退94と肉薄状態もあるほど近接しています。
フルサービスの淘汰を促したセルフSSでしたが、明らかにセルフSSがふるいにかけられる段階に入っています。
もう1つSS数の話です。油業報知新聞に今年6月末の元売別SS数が掲載されていました。
目を引いたのが、JXTGの社有セルフSSです。2017年の統合時に比べて16カ所減少しています。元売全体では106カ所増です。統合で両社セルフSSが重複して間引きが起こったと想像されます。
恐らく同じ理由と思われますが、同時期に社有SS全体でもJXTGは突出して減少しています。(JXTG▲145SS、他社+27SS)
太陽石油も減っています。西日本集約戦略で東日本の直営を廃止したことによると思われます。
出光と昭シェルでも協働関係が深まるほどにネットワークの再編成が始まるでしょう。
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漸落する石油需要の中で、明らかに元売のネットワーク再編成が動いています。
今や3カ所に1カ所がセルフSSですが、販売シェアは過半数を超えるでしょう。油業報知新聞の別稿で西尾直毅さんが述べるように、セルフの「ガソリン競争力」は立地、設備で決まるとおっしゃっています。解禁後20年間の推移を見てもよく理解できます。
そしてセルフ、フルに限らず、元売と小売との間に温度差が広がろうとしています。元売は恐らく、販売量と収益の交差比率などを使ってSSの存廃を判断していると想像します。石油製造供給業者だからです。ドラマ半沢直樹の銀行的な考えでしょう。ガソリンはコモディティで金融商品ですから間違った考え方ではありません。
一方、小売は元売が洟もひっかけないような立地と設備であろうと、そこで利益をあげるのが仕事です。手練手管を駆使して、店主夫婦が汗をかきながら小商売で利益をあげようとします。COCの会員でも、知らないうちに墓の掃除や花卉を栽培している人がいます。
石商幹部のように市況や数量こだわる方々もいる一方で、ガソリンに対する考え方が変わってしまった人も少なくありません。自由化以降、半数のSSと事業者が業界を去りましたが、20年間の市場を生き残った人たちはかなりタフだと思います。
元売や大手量販店は残存者利益に群がっています。一方で、ガソリン販売量は少なくなっても、「給油機能が付いた小売業態」を着実に作り上げる経営者もいます。ある経営者は、「こんな時代に収益貢献の少ないガソリン給油設備が敷地の大部分を占めているのはおかしい。しかも規制コストばかりかかっている」と疑義を口にします。アイランドを縮小した方が、油外など利益事業のスペースに生かせると言います。
日本が自由化した同時期に、欧米石油会社は国内精製販売部門の効率化、集約に動きました。精製供給に特化した有力企業が登場して、精販が分離します。その結果、石油系コンビニを蹴散らしてウォルマートやコストコ、流通系コンビニが台頭しました。
似たような「効率化」が始まった日本の市場は、石油流通のグローバルスタンダードを20年遅れでトレースしているように見えます。欧米と違って、中小小売業から新しいセルフやフルサービスのモデルが登場することを祈念しています。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局