COCと独立経営<671>系列SS新設に次世代モデルはあるのか? – 関 匤

まずは台風被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます。

さて、最近元売直営、大手特約店など系列店のSS新設が増え始めたと感じます。昨年のJXTG誕生以降、ガソリン粗利が取れるようになったことで、新設意欲が高まっているようです。手持ち資金のある大手店にとっては、投資利回りが読めるようになったのでしょう。

元売は市場成熟=縮小を認識したうえで、ネットワーク効率化を急ぎます。直営も含めて生産―物流―販売効率までの最適サプライチェーン構築に動いているはずです。

再編元売の系列内では、元売対特約店の力学が元売優位に転換しました。大手店は存在感(元売ロイヤリティ)を高める意味でも、取引数量を伸ばす必要があります。

前回商社のことを書きましたが、商社も事業再構築です。自由化以降は業転部門が花形で、直営SSは商社ブランドで補助的な位置付けでした。儲からずに手放す動きもありました。しかし現在、明らかに組織内で直営と商社ブランドの販売店卸しが再評価されています。

商社PBを外して元売マークを掲示してセルフ化する動きすらあります。元売に「誠意」を見せているのでしょう。商社ブランドの販売店卸しも実態は「準系列」です。これまた、元売との力学転換によるものでしょう。

また、PBがコスモ、キグナス、太陽など「非再編元売」のブランドを掲示する動きも少しずつ現れています。再編元売を嫌って、安定供給先を求めているのでしょう。

しかし、同系列内の新設・受入れは「系列内選別」の度を早めます。19年度補助金事業でタンク撤去関係が8月末で495件です。系列内競争がSS閉鎖を促進していると見られます。業界地図がどんどん塗り替わっている感があります。

ところで、伊藤忠エネクスが、10月1日から組織変更を公表しています。石油販売部門は「生活・産業エネルギー部門」でSS販売と直売を統括していました。これが「カーライフ部門」(SS)と「産業ビジネス部門」に分離独立しました。事業が好調だからでしょう。

2015年度と18年度を比べると、純利益に占める石油部門の構成は27%から54%に倍増しています。しかも純利益は1.5倍になっていますから、石油販売が収益を強力に牽引したことが分かります。

同社は伊藤忠燃料からエネクスに社名を変更して以降、電力事業を強力に推進してきました。5つの発電所を擁して470万MWhの電力販売量は新規事業者で9位です。先の15年度は10%の売上構成比ながら純利益の30%を稼いでいました。

しかし電力買取制度(FIT)縮小など電力部門に逆風が吹くのに対して、石油は元売再編以降利益が大幅拡大となり、10月からの石油組織強化になったようです。自由化以前の「忠燃」に戻ったような既視感を覚えます。直営SSと商社ブランド卸しが利益をあげているということです。

同社に限らずSS・石油事業の再評価が、新設意欲を高めていると言えます。ただし、それは大手業者の話です。

系列・非系列の中小店は、ネットワーク再編と新設SS参入によって、給油客は自然減以上に簒奪されます。流れとしては、確実に「脱給油依存」に進むでしょう。気が付いたらラーメン屋がガソリンを売っていたもアリと思います。

SS新設は結構なのですが、2019年の新設SSは5年、10年後の事業環境を見込んだうえで行われているのでしょうか。私が知る限り、2020年以降の「次世代モデル」は見当たりません。19年時点で成立する“刹那的モデル”に思えます。

メジャーのRDシェルは、ブリティッシュガス買収のために昭和シェル株式を出光に売却。ガス発電による電力事業を主柱に据えました。この時、ガソリン、EV給電、洗車、コンビニ、商業施設をオールインワンにした次世代業態のイメージパスを発表しています。

実現するかどうかは別にして、未来図の提示は本部機能として義務ではないかと考えます。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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